家計
貯金の使い道を見直して効率的にお金を貯める方法
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お金を貯める目的がなければ、貯金も日々の生活を圧迫する要因としか感じられません。あるいは、忙しくてお金を使う時間がないという方や、何に使っていいのかわからないという方も多いでしょう。実際のところ、世間では何のために貯金をして、貯めたお金をどんなことに使っているのでしょうか。今回は、「貯金の使い道」に焦点を当てて解説します。「貯金をしているけれど、使い道が決まっていない」という方は、ぜひ参考にしてください。
みんなの貯金の使い道は?
稼ぐこと・貯めることについては、書籍でもインターネットでも、さまざまなテクニックが紹介されています。しかし、お金の「使い道」については多くは語られていません。
お金は、有効活用されると「生き金」、無駄にされると「死に金」と呼ばれることがあります。死に金には、浪費だけではなく、蓄えるばかりで活用しないお金という意味もあります。同額のモノやサービスと交換できるお金は、蓄えることではなく、使うことで価値を発揮するのです。近年、必要性が語られているiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAも、貯蓄を運用することで利益を生む「生き金」にしようという試みといえるかもしれません。
貯金の使い道を見る前に、まずは世間の「貯金額」を見てみましょう。令和3年度(2021年度)「家計の金融行動に関する世論調査」では、貯蓄額の平均値と中央値が公表されています。平均値には高収入世帯も含まれており、貯蓄額が引き上げられてしまう傾向があります。そのため、全体を貯蓄額の順に並べたときに、ちょうど真ん中に位置する「中央値」のほうが、より実態に近いでしょう。中央値は、単身世帯では中央値が100万円、二人以上世帯では中央値が450万円となっています。
それでは、実際のところ、世間ではどのような目的で貯金をしているのでしょうか。
貯金の目的は「老後資金」「不時の備え」がトップ
令和3年度(2021年度)「家計の金融行動に関する世論調査」では、金融資産の保有目的に関するデータも公表しています。金融資産とは、現金・預貯金などの「貯金」だけでなく、将来に備えて持っている株式・債券・投資信託などの「貯蓄」も含めた資産のことです。
これらを踏まえた金融資産の保有目的は、単身世帯・二人以上世帯それぞれの割合の高い順に並べてみると、以下の通りです。
<2021年度 単身世帯・二人以上世帯の金融資産の保有目的(3つまでの複数回答)>
保有目的 | 単身世帯 | 二人以上世帯 | ||||
割合 | 割合の合計に対する比率 | 中央値に対する金額の目安 | 割合 | 割合の合計に対する比率 | 中央値に対する金額の目安 | |
1.病気や不時の災害のときに備えるため | 49.3% | 25.5% | 255,000円 | 50.9% | 23.6% | 1,062,000円 |
2.子供の教育資金にあてるため | 1.3% | 0.7% | 7,000円 | 20.9% | 9.7% | 436,500円 |
3.子供の結婚資金にあてるため | 1.1% | 0.6% | 6,000円 | 4.8% | 2.2% | 99,000円 |
4.住宅(土地を含む)の取得または増改築などの資金にあてるため | 7.0% | 3.6% | 36,000円 | 9.8% | 4.6% | 207,000円 |
5.老後の生活資金にあてるため | 63.3% | 32.8% | 328,000円 | 68.5% | 31.8% | 1,431,000円 |
6.耐久消費財(※)の購入資金にあてるため | 10.7% | 5.5% | 55,000円 | 12.6% | 5.8% | 261,000円 |
7.旅行、レジャーの資金にあてるため | 20.9% | 10.8% | 108,000円 | 19.6% | 9.1% | 409,500円 |
8.納税資金にあてるため | 2.3% | 1.2% | 12,000円 | 2.4% | 1.1% | 49,500円 |
9.遺産として子孫に残してやりたいから | 4.3% | 2.2% | 22,000円 | 6.6% | 3.1% | 139,500円 |
10.とくに目的はないが、金融資産を保有していれば安心なため | 25.8% | 13.4% | 134,000円 | 15.3% | 7.1% | 319,500円 |
11.その他 | 7.2% | 3.7% | 37,000円 | 4.0% | 1.9% | 85,500円 |
合計 | 193.2% | 100% | - | 215.4% | 100% |
単身世帯では、「老後の生活資金」が63.3%と最も高いという結果で、前年の56.1%よりも大幅に増えています。以降は「病気や不時の災害への備え」の49.3%と続きますが、こちらも前年よりも上昇傾向です。2020年~2021年は新型コロナウィルスの影響が強かったため、事業縮小によるリストラや感染症による休職が、より現実味のある年だったことも関係しているかもしれません。
その次に多いのは、「とくに目的はない」の25.8%。二人以上世帯でも15.3%を占める理由となっており、「とりあえず資産を持っていたら安心」と考えている世帯の割合は高いことが伺えます。
二人以上世帯は、単身世帯よりも老後資金や不時の備えに対する意識が強いようです。「老後の生活資金」と「病気や不時の災害への備え」が上位に挙がっているのは単身世帯と同じですが、二人以上世帯では、いずれも5~7割を占めるほどに重きをおいています。単身(勤労)世帯の平均年齢は49歳、二人以上(勤労)世帯の世帯主の平均年齢は55歳となっており、平均年齢が高い二人以上世帯のほうが、老後資金の必要性に現実味を持っているのでしょう。
また、二人以上世帯では共働きの夫婦だけではなく、配偶者や子供を養っている世帯も含まれます。自活力の低い家族の生活を支えなければならない二人以上世帯のほうが、万が一の備えを重視していることがわかります。
面白いのは、単身世帯・二人以上世帯ともに金融資産の保有目的が「住宅や土地の取得・増改築の資金」の割合が10%を下回るという点です。「結婚したらマイホームを買う」というこれまでの価値観が変わり、身軽な賃貸を選ぶ世帯も増えてきました。また、現在は頭金なしのフルローンが組みやすいので、住宅購入のために頭金を貯めなくてもなんとかなる、という理由もあるかもしれません。
もちろん、フルローンは返済負担が大きくなるというデメリットがあります。しかし、返済額を月収から支払える額に留め、余剰金をすぐ引き出せる方法で貯めておくことで、繰り上げ返済に対応できるだけではなく、いざというときの病気・ケガや収入減の備えにもなってくれるでしょう。
貯金の「使い道」で金融商品を選びましょう
金融商品は、換金のしやすさを示す「流動性」、元本・利子の支払いの確実性を示す「安全性」、利益の期待値が高さを示す「収益性」という3つの軸で評価できます。たとえば、預貯金は安全性・流動性どちらも優れていますが、金利が低く、収益性は高くありません。株式は収益性の高さが魅力で、債券よりも流動性は高いですが、価値が暴落して大損をする可能性も否定できず、安全性には欠けます。投資信託は、20年以上の運用をすると損が出にくいといわれています。そのため、向こう20年は使わないような老後資金の形成に向いています。
このように、金融商品にはそれぞれメリットとデメリットの両方を持ち合わせています。お金の使い道も大切ですが、保有資産の流動性・安全性・収益性に注目し、分配して保有することも大切です。
世間では、どのような基準で金融商品を保有しているのでしょうか。令和3年度(2021年度)「家計の金融行動に関する世論調査」では、金融商品の選択基準に関するアンケートも実施しています。
<金融商品の選択基準>
金融商品の選択基準(単身世帯) | 単身世帯 | 二人以上世帯 |
1.利回りが良い | 20.0% | 18.7% |
2.将来の値上がりが期待できる | 15.5% | 16.1% |
3.元本が保証されている | 20.4% | 22.2% |
4.取扱金融機関が信頼できて安心 | 7.4% | 7.0% |
5.現金に換えやすい | 4.5% | 4.1% |
6.少額でも預け入れや引き出しが自由にできる | 9.3% | 8.5% |
7.商品内容が理解しやすい | 11.7% | 12.4% |
8.その他 | 11.2% | 10.9% |
同調査によると、二人以上世帯の場合、「元本が保証されている(22.2%)」「利回りが良い(18.7%)」「将来の値上がりが期待できる(16.1%)」など、安全性・収益性を重視しているようです。単身世帯でも「元本が保証されている(20.4%)」がと最も高く、次に「利回りが良い(20.0%)」「将来の値上がりが期待できる(15.5%)」が続きます。単身世帯の場合、安全第一の運用ではありますが、二人以上世帯よりも収益性を重視していることがわかります。単身世帯は比較的若い世代が多いため、利益を狙って大損をしても取り返しやすいというアドバンテージがあります。
<目的別・金融商品の運用スタイル>
金融商品 | 特徴 | 向いている人 |
預貯金 |
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外貨預金 |
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投資信託(公社債型) |
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投資信託(株式型バランス型) |
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株式投資< |
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貯蓄型保険 |
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不動産投資 |
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ライフステージや年齢に応じて金融資産を選ぶ
預貯金以外はどれも元本割れをする可能性があるほか、いざというときに引き出せなかったり、損失を出したりすることがあります。金融商品には目的によって向き・不向があり、教育資金や老後資金のための金融商品というのも存在します。しかし、どの金融商品にもメリットはもちろん、デメリットがつきものです。「教育費だから、学資保険で貯めよう」「先の老後資金を、投資で増やしてみよう」など、安易に決めないようにしましょう。
若いうちは収益性の高い株式や投資信託を持つメリットがありますが、老後まで利益が維持できる保証はありません。60代に入る前に利益を確定させ、退職までの10年間はリスクの低い債券を運用する、といった対策が必要になることもあります。このように、ライフステージや年齢によって、適切な金融商品の構成は変わります。それぞれの性質を把握したうえで、将来のライフプランに合った資産運用を考え、目的に合った金融商品を選んでみましょう。
お金の使い道を決めれば、効率的に貯められる
貯金は将来の備えであり、いずれ自分の身を助けてくれるお金です。お金を貯める目的を決める、目的に応じて金融商品を選択するなど、貯金の使い方を見直してみることをおすすめします。
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出典
「家計の金融行動に関する世論調査」(金融広報中央委員会)
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/