家計
老後用の貯金だけが大事?今の暮らしも満足にしたい貯蓄のノウハウ

老後の貯金に不安を感じている人は多いもの。
その理由の大部分は「老後2,000万円問題」からくる疑問「本当に2,000万円貯めなくてはいけないの?」というものではないでしょうか。
しかし2,000万円貯めなきゃ…と老後の生活の貯金ばかりを優先していると、今の暮らしを楽しむ余裕が生まれないかもしれません。
安心な老後と、現在の生活のバランスを考えるのは難しいですよね。
そんな悩みを持つ人のために、この記事では老後の貯蓄のポイントについて詳細を解説していきます。
- 2,000万問題の真相と、老後に必要な資金の考え方
- 老後の貯蓄に必要不可欠な「ライフプランニング」について
このような老後資産の考えに役立つ情報も説明していきます。
それではさっそく見ていきましょう。
結局老後の貯金にはいくら必要なのか
多くの人が「結局老後にはいくら必要なの?」と感じているでしょう。しかし結論からいうと、老後の貯金目標額に一般に通用する数値は存在しません。その理由は、家計によって老後に必要となる金額がまったく異なるから。
自分の家庭の老後に必要な資金を知るには「家計の収支」や「老後の生活スタイル」などの詳細を把握する必要があるのです。
とはいえ一つの目安が欲しいと感じる方もいるでしょう。
まず「老後2,000万問題」と呼ばれる問題について考えてみたいと思います。
2,000万問題とはいったい何だったのか
多くの人の老後を不安にさせる「2,000万円問題」。
この話は金融庁の報告書「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」」内の一部分が抜粋され、話題になったものです。
その内容とは「夫65歳の定年退職後夫婦ともに無職だった場合に、およそ2,000万円が必要になる」というもの。
2,000万円という金額は、以下の条件から算出された数値です。
- 夫95歳、妻90歳までに必要な資金として考える。
- 老後の収入を、およそ21万円とする。
- 老後の支出を、およそ26万円とする。
以上の条件だと、月収入21万ー支出26万円=5万円の赤字が出る計算になります。
その生活を30年間続けると、5万円×12か月×30年=1,800万円が必要になる…という話が「2,000万円問題」の正体なのです。
老後に必要な貯金は日々の支出や就労状況によっても異なる
ただしこの2,000万円という金額は、2018年時点の平均数値を単純計算して出したものでしかありません。
共働き家庭であればもらえる年金の額も変わってきますし、そもそも夫婦2人で月26万円も使わないという家庭も多いでしょう。
またこれからの世代では老後も何らかの仕事に就き働く、という生き方が増えています。
老後資金を考えるうえで大切なのは、夫婦の老後の生活を考えることと家計の収支を把握すること。この2つが出来ていないと、そもそも老後資金としてどのくらいの貯金が必要になるのかが割り出せないのです。
相談事例:30代 共働き夫婦の場合
相談事例:30代 単身男性の場合
老後のための貯蓄ノウハウ3箇条
それでは老後のための貯蓄には、何をしたらよいのでしょうか?
老後の貯金を進めるうえで大切になるノウハウを3つご紹介します。
- 詳細なライフプランニングを立てること
- ライフプランニングは節目節目に見直しをすること
- 「現在の生活」を含めた長期的な視野で家計を把握し、貯蓄すること
重要なのは、自分の家庭にあった老後資金の準備をすること。
2,000万円は平均のデータから算出した一種の「目安」にはなりますが、すべての家庭に当てはまる物では当然ありません。
その一方で、将来的には年金が受け取れる時期が後ろ倒しになるなど社会保障が現在よりも小さくなる可能性もあります。
あらゆるリスクを考えた「自分の家庭ならでは」の準備を進めていくことがもっとも大切になるのです。
老後の貯蓄ノウハウ1 プロによる詳細なライフプランニングを受ける
ノウハウの1つ目は、自分の家計の把握を早急に行うこと。
そのために必要なのが「ライフプランニング」です。
ライフプランニングとは、家計の収支・将来的なライフイベントを考慮した将来設計を立てることを言います。
ライフプランニングをするうえで考える項目は多岐にわたりますが、大まかに以下の内容が考慮されて策定されます。
- 月々の生活費
- ライフステージの変化に合わせた生活費の変動
- 家族の収入
- 臨時の出費があるイベントの把握
- 医療費、教育費などの目安
- 将来の予想年金額
- 物価変動予測
前述のとおり、老後に必要な資産は各家庭でまったく異なるもの。そのため老後資金を知るには、この「ライフプラン」を立てることが必須です。
その理由は、家計の収支・お金のかかる臨時のライフイベント・老後の就労に対する考え方などを総合して考慮する必要があるから。
あらゆる側面を把握してはじめて、家庭ごとに必要な老後資金が出せるようになるのです。
ただし詳細なライフプランを立てるのは、金融全般の知識がないと相当難しい作業になります。
ライフプランを立てる際は、経済や金融の知識に精通したファイナンシャル・プランナーに任せるのが確実です。
ライフプランニングの精度は、将来の生活を見通すうえで重要な部分。策定するには、専門知識と客観的視点を持つ第三者に依頼することをおすすめします。
老後の貯蓄ノウハウ2 節目節目でライフプランの見直しをする
老後の貯蓄を考えるうえで2つ目に大事なことが、ファイナンシャル・プランナーに立ててもらったライフプランを定期的に見直しすること。
その理由は、これから10・20年後の老後までには「老後に必要な資金に影響を与える不確定な要素」が多いから。
不確定な要素として考えられるのは、以下の例があります。
- 家族の健康状態
- 夫婦の年金額
- 公的保険制度
- 今後の年収
- 退職金の金額
- 子供の進路
これらの要素は、日々・年々変化していくもの。さらに、状況が変わったときの必要資金に大きく影響する要素でもあります。
そのためライフプランには定期的な見直しが必須。ある一時期でライフプランを立てたからと言って、それで終了にしてしまうとライフプランの意味がなくなってしまいます。
状況が変わった都度設計しなおすことで、想定外のリスクに対応できることにつながるのです。
老後の貯蓄ノウハウ3 長期的な視野で家計を把握すること
老後資金は大切ではありますが、今の生活とのバランスを見て考えていくことが重要です。
ライフプランニングしないままやみくもに老後資金を貯めようとすると、今の生活が犠牲になりかねません。
もちろん老後資金の貯蓄は大切ですし、余剰資金があれば安心できるのは確か。
しかし現在の生活を不必要に切り詰めた結果、老後に使い切れない程の余剰資金が発生するのは考えものですね。
ライフプランニングで老後に必要な資金を把握すれば、老後までに貯めるべき目標額の指針ができます。
今後やってくるライフイベントや考慮すべきリスクが明確になるので、今使うべきお金や余剰資金についても把握しやすくなります。今の暮らしを充実させる資金の使い方が可能になりますよ。
ライフプランニングは資産の設計だけではなく、家族が目標や生きがいを持って生活することを目的としています。
老後の生活だけに焦点を当てるのではなく「現在」を含めた広い視野でライフプランを立てること。それこそが、人生100年時代を生き抜くポイントなのです。
まとめ
老後の貯金を考えるうえで大切なことについて解説していきました。
あらためて重要なポイントをまとめます。
- 「老後に2,000万円必要」という話は、あくまでも2018年時点の老後夫婦の平均収支から単純計算したもの。
- 老後に必要な資金は、家庭ごとに大きく異なる。そのため自分の家に必要な老後資金を考えることが重要になる。
- 老後資金を貯蓄するためのノウハウは「FPにライフプランニングを立ててもらうこと」「ライフプランニングは定期的に見直しをすること」「長期的な視野で資金を準備すること」
老後資金は大切ですが、自分の家に必要な金額を知らずに貯めていくのはNG。不安ばかりが大きくなり、今の暮らしを犠牲にすることになりかねません。ライフプランニングを適切に利用して「今」も大切にする老後資金の貯金準備をはじめてみませんか。
※この記事は2021年7月時点の法律・情報に基づき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。
執筆者
pomoco
元金融会社勤めのフリーランスライター/2級FP技能士資格保有
FP資格の知識を生かし、金融全般や家計といったジャンルを中心に執筆活動中。
会社員のときに感じていた「ワーママの毎日に楽しい!を増やしたい」というテーマで、日々情報を発信しています。