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解約返戻金で失敗しない!FPが教える かかる税金と確定申告のポイント

解約返戻金で失敗しない!FPが教える かかる税金と確定申告のポイント

解約返戻金とは?基本的な仕組みを理解しよう


解約返戻金の意味と役割

解約返戻金(かいやくへんれいきん)とは、生命保険や損害保険の契約において途中で保険を解約した際に契約者が受け取れる払戻金を指します。
これは、契約期間中に支払った保険料のうち、一部が返還される仕組みです。
解約すると以後の保障がなくなりますが、急に資金が必要になったときなどに解約返戻金を活用できます。
解約返戻金は契約内容や解約するタイミング、保険会社によって金額が異なります。なお、保険会社によって「解約払戻金」や「解約返還金」などと呼び方が違う場合もあります。

解約返戻金が発生する保険の種類と特徴

解約返戻金が発生する保険には、生命保険では終身保険や養老保険などの貯蓄型保険、損害保険では積立型の傷害保険があります。
一方で、掛け捨て型の定期保険では解約返戻金が発生しない場合がほとんどです。
また、低解約返戻金型の生命保険では、保険料払込期間中の解約時に解約返戻金が少額となる点が特徴です。
※解約返戻金がない代わりに保険料が割安な無解約返戻金型の保険もあります。

満期保険金や保険金・給付金との違い

解約返戻金は、保険契約の途中解約時に支払われるもので、満期保険金や給付金とは性質が異なります。
満期保険金は、契約満了まで保険を継続した場合に受け取れる金額をさします。
また、保険金・給付金は保険契約で決められた事象(支払事由)が発生した際、例えば死亡したときや入院したときに支払われます。
お金を受け取る人にも違いがあります。満期保険金や保険金・給付金は契約時に指定した保険金受取人に支払われますが、解約返戻金の受取人は基本的に契約者です。

解約返戻金がいくらか確認するには?

解約返戻金は、保険契約の内容や解約時期、支払済み保険料の金額などによって異なります。
加入している保険の解約返戻金額を知りたい場合は、保険会社から提供された試算表や保険証券、毎年保険会社から送られてくる「契約内容のご案内」で確認することをお勧めします。
確認のしかたがわからない場合は、保険会社やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。

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解約返戻金にかかる税金の種類と計算方法


所得税・住民税・贈与税の違いを解説

解約返戻金にかかる税金は、解約返戻金を受け取った人が保険料を負担しているかどうかによって、所得税・住民税、または贈与税が適用されます。
契約者(保険料を負担する人)が解約返戻金を受け取る場合、一時所得として所得税及び住民税の対象となります。
一方、契約者ではない人が解約返戻金を受け取ると贈与となり贈与税の対象となります。

<所得税>

所得税・住民税は、収入や収益に対して税金がかかりますので、支払った保険料総額よりも受け取った解約返戻金額が少ない場合には税金がかかりません。
反対に、解約返戻金額が支払保険料総額を上回った場合、上回った部分(=収益)が一時所得となりますが、一時所得には50万円の特別控除があります。

一時所得の金額=総収入金額 – その収入を得るために支出した金額- 特別控除額(最高50万円)

所得税・住民税は、一時所得の2分の1にかかりますが、税額を計算する際は給与所得など他の所得の金額と合計して税額を計算する総合課税*が適用されます。

*一時払の養老保険など所定の保険契約を契約後5年以内に解約した場合、金融類似商品として源泉分離課税の対象となり、受取額と払込保険料との差額に対して20.315%(所得税+住民税)が課税されます。

<贈与税>

贈与税は、その年に贈与として受け取った額から基礎控除額(110万円)を差し引いた残りの額に税金がかかります。

贈与税の課税対象額=その年に贈与として受け取った額-基礎控除額(110万円)

かかる税金の種類や控除などの制度について理解しておくことが、後のトラブルや予想外の税負担を防ぐポイントです。

解約返戻金に税金はかかる?

実際に解約返戻金を受け取った場合、税金はどのように計算するのでしょうか。具体例で見てみましょう。

<所得税>

解約返戻金額:300万円
支払った保険料総額:200万円
※他の一時所得はない

一時所得の額は、総収入額から「その収入を得るために支出した費用」と「特別控除50万円」を引いて計算します。

一時所得の額: (300万円 − 200万円 − 50万円)= 50万円

納める税金の額は、一時所得の2分の1に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後に、税率をかけて計算します。

一時所得の課税対象額=50万円×1/2=25万円
つまりこの例では、所得税・住民税がかかる所得は25万円となります。

<贈与税>

契約者(=保険料を負担する人)と解約返戻金受取人が異なる場合は贈与となり、贈与税が適用されます。

解約返戻金額:300万円
※他の贈与はない

贈与税の課税対象額=300万円-110万円(基礎控除)=190万円
基礎控除を引いた後の課税価格が200万円以下の場合、適用される税率は10%ですので、納める税金の額は
190万円×10%=19万円
となります。

どの税金が適用となるか、実際に支払う税額については、税務署や税理士に相談しましょう。
申告する前に家計を整理しておきたい、現在加入している保険の活用方法や家計にかかる税金について概要を知りたい、という方はお金のプロであるファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。

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申告のタイミングと方法を徹底解説


確定申告・贈与税申告が必要なケースとは?

確定申告は、1年間の所得に対して一人ひとりが納めるべき税金の額を確定するための手続きで翌年の2月から3月が申告期間となっています。
また、贈与を受けた場合も同様に贈与税申告が必要です。
保険を解約して解約返戻金を受け取った際に申告が必要なケースは「一時所得」と「贈与」で異なります。

<一時所得に該当する場合>

契約者(保険料を負担する人)が受け取った解約返戻金の金額とこれまで支払った保険料の合計金額の差額が一時所得となり、他の一時所得と合わせて特別控除額50万円を超える場合は原則として確定申告が必要です。
つまり、以下の場合は解約返戻金に対して税金はかからないので申告は必要ありません

・解約返戻金額が支払った保険料の合計金額より少ない場合
・解約返戻金以外に一時所得がなく、解約返戻金額と支払保険料額の差額が50万円以下の場合

なお、企業等に勤めていて給与を受けている人(給与所得者)のうち所定の条件を満たしている場合は、一時所得90万円*までは申告不要です。

*参考:国税庁HP(No.1490 一時所得 Q&A)より抜粋
一時所得は、所得金額の計算上、特別控除額50万円を控除することとされており、他の一時所得とされる所得との合計額が年間50万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません。また、一般的な給与所得者の方については、その給与以外の所得金額が年間20万円を超えない場合には、確定申告をする必要がないこととされており、一時所得については、50万円を控除した残額に2分の1を乗じた金額によって所得税額を計算することとされていますので、他の一時所得とされる所得との合計額が90万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません。

<贈与に該当する場合>

解約返戻金を受け取った人が契約者でない場合は贈与となり贈与税がかかります。
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方法があり、一定の要件に該当する場合に「相続時精算課税」を選択することができます。
ここでは暦年課税について説明します。

贈与税は1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除(110万円)を差し引いた残りの額に対してかかります。
1年間に贈与を受けた財産価額の合計額が110万円以下なら贈与税がかからないので贈与税の申告は不要です。


申告に必要な書類と手続きの流れ

解約返戻金を受け取り、一時所得や贈与の金額を確定・申告するには、正確な書類の準備が欠かせません。
具体的には、保険会社から発行される「解約手続き完了のお知らせ」や「解約返戻金通知書」には受け取る解約返戻金の額が記載されていますので必ず保管しておきましょう。
また、勤務先で年末調整をしている場合は、源泉徴収票も必要です。

申告手続きは確定申告書(紙)のほか、パソコンやスマートフォンで申告できる国税庁のe-taxを利用します。紙で申告する場合は必要な書類を税務署で入手しましょう。
申告書類や入力フォームに必要事項を記入(入力)していくと、課税額が算定されます。
なお、解約返戻金の額によっては、保険会社が作成する法定書類(支払調書)の提出を求められる場合があります。

提出する書類に不備があると申告が受理されない可能性があるため、書類の記入や提出には十分注意しましょう。

申告を忘れた場合のリスクと対応法

解約返戻金に関する申告を忘れてしまうと、思わぬペナルティが発生する可能性があります。
例えば、無申告加算税や延滞税が課せられるリスクがあります。これらは本来の税額に加算され、納税額が増える原因となりますので、申告漏れに気づいた際には早急に対応することが重要です。
自ら修正申告を行うことで、追加の負担を最小限に抑えられる場合があります。
万一、申告漏れや申告内容の誤りがあった場合は、所轄の税務署または税理士に相談し、速やかに修正申告を行いましょう。

申告時の注意点

確定申告や贈与税の申告では、税額を自分で算出するため不安に思うかもしれません。
確かに申告に必要する収入や支出を整理したり、添付書類を取り寄せる手間がかかりますが、手書きの申告書でもe-taxによる申告でも計算式通りに記入(入力)すればよいので、申告自体はそれほど難しくはありません。

気をつけるポイントはいくつかありますが、まず受け取った解約返戻金や自身が負担した保険料の金額を正確に把握することです。
解約返戻金額は保険会社から届く「解約手続き完了のお知らせ」や「解約返戻金額通知書」に記載されています。支払った保険料額がわからない場合や書類を無くしてしまった場合は保険会社に確認しましょう。

次に、解約返戻金のほかに一時所得や贈与に該当するものはないか確認すること。
例えば養老保険の満期金は一時所得に該当します。ここで漏れや金額の間違いがあると課税額が変わってしまいますので特に注意が必要です。

そして申告の準備ができたら必要書類が全て添付されていることを確認し、期限内に提出することです。
不明点があれば放置せず、申請期限内に所轄の税務署に相談し、適切に対処しましょう。


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保険を解約するときに気をつけたいこと

解約返戻金を契約者が受け取る場合で、支払保険料総額より解約返戻金額の方が少なければ税金はかかりませんので、必要なタイミングで解約し、解約返戻金を必要な資金として活用しましょう。

解約返戻金額の方が多い場合は、その差額が課税対象となりますが、「特別控除額(50万円)」を活用することで税負担の軽減が期待できます。
例えば、ほかに一時所得がある場合は翌年に解約して一時所得を分散すること、保険をすべて解約するのではなく保障の一部を解約して一時所得の金額を抑えることがあげられます。
ただし、ほかに一時所得がある場合や、一時所得は総合課税なので給与所得など他の所得が多い場合は効果が薄くなります。

贈与の場合は、1年間に贈与額が基礎控除額(110万円)を超える部分に贈与税がかかり、贈与を受けた人が税金を負担することになります。
贈与税の負担を軽くしたい場合は、贈与の時期などを調整するようにするとよいでしょう。

なお、保険を解約すると以降の保障がなくなりますので、解約を検討する際には万一のことがあった場合の生活や今後のマネープラン(資金計画)について十分考慮しましょう。
お金のプロであるファイナンシャル・プランナー(FP)なら、将来のライフプランと現状の家計を整理して、最適なマネープランを提案してくれますので、ぜひ相談してみましょう。

保険のこと・お金のことは専門家に相談しよう

保険を解約した場合、解約返戻金に対して税金がかかります。個別の税務の取扱いは所轄の税務署または税理士に相談しましょう。 

保険は「何かあったとき」に金銭的な保障を受けられだけでなく、解約返戻金を教育費用や緊急資金に利用することもできます。
ただし解約してしまうと「何かあったときのお金」を別に用意しなければなりません。

保険を解約する前にご自身や家族のライフプランと家計の状況を整理して、将来お金に困ることがないよう、マネープランを見直すことが重要です。
もし一時的にお金が必要な場合は、保険の保障額を下げて支払保険料を抑えたりするなど保険を解約しなくてもすむ場合があります。

ファイナンシャル・プランナー(FP)は保険や投資信託などの金融商品や、NISA・iDeCo・住宅ローン控除・年金・医療保障といった税の優遇や公的保険の制度など、お金に関するあらゆる知識やネットワークを持つお金のプロです。
個々の状況に合った的確なアドバイスを受けることが可能ですので、一度相談してはしてみてはいかがでしょうか。


※この記事は、2025年1月20時点の税制・情報に基づいて作成しています。

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