健康
そのツライ花粉症、治療できるかも?広がる花粉症治療の選択肢

毎年、冬の寒さと入れ替わりでやってくるのが花粉の季節。花粉症の方には辛い時期になりました。日本アレルギー協会によると、国内のスギ花粉症の患者数は年々増加しており、日本人の約16%はスギ花粉症の患者といわれているようです。それほど患者数が多い花粉症ですが、一昔前は、「花粉症は一生治らない」ともいわれていました。しかし、最新の花粉症治療では、長期にわたって症状が出ないようにしたり、症状を和らげたりすることが期待できます。
■花粉症は治療できる?広がる選択肢
花粉症は、花粉が原因となって起きるアレルギー症状です。
花粉症では、空気中に飛び交っている花粉が鼻や口、目といった粘膜に付着することで、アレルギー症状が起こります。人によって症状の現れ方はさまざまですが、くしゃみや鼻水、鼻詰まり、目のかゆみ、喉のかゆみ、皮膚のかゆみなどが多くみられます。代表的なものは、1月から4月前後にかけて増えるスギ花粉をアレルゲンとするスギ花粉症。花粉症患者の約9割が、スギ花粉症だといわれています。特に近年では患者の低年齢化が進む傾向がみられ、深刻な症状による思考力低下や疲労、睡眠障害などが生活や勉強に支障をきたすこともあります。
そんな花粉症の治療法として一般的なのは、初期療法として抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬の服用、中程度~重度の症状への対処法として鼻噴射用ステロイド薬などです。この他、スギ花粉以外のブタクサや稲などの花粉にも反応し、一年を通してアレルギー症状がある重度の患者には、鼻の中に内視鏡を入れて粘膜を焼き、鼻の神経を切断するという「後鼻神経切断術」という治療法もあります。
「後鼻神経切断術」の治療はレーザー治療やステロイド薬などの治療でも効果が出ない患者の最終的な手段として知られていますが、全身麻酔下で手術を行うため入院を伴う手術となるため、時間がなかなか取れない社会人にとっては、気軽にできる治療とはいえません。そんな中、忙しい現代人でも気軽に受けられ新たな花粉症治療として注目されているのが、舌下免疫療法です。
■舌下免疫療法とは?メリットは?
舌下免疫療法はアレルゲン免疫療法のひとつで、アレルゲンを含む治療薬を体内に入れることで少しずつ身体をアレルゲンに慣れさせて症状を改善するというものです。舌下免疫療法ではアレルゲンを含む治療薬を舌の下に置き、しばらくそのままにした後に飲み込みます。服用は1日1回、最初は少量からはじめてその後は一定量を数年間にわたって継続的に使用します。
舌下免疫療法のメリットは、長期的にアレルギー症状を抑えて緩和することが可能だという点です。抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬、ステロイド薬に比べて即効性は低いとされていますが、根本的にアレルギー体質を改善できる効果があるともいわれています。
一方、デメリットとしてあげられるのは、アレルゲンを投与するという治療の性質上、人によっては服用後に、口の中や舌、喉、耳にかゆみやしびれを感じたり、頭痛が起きたりといった副作用が出る恐れがあるということです。まれにですが、蕁麻疹や腹痛、嘔吐、息苦しさ、意識の混濁といったアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。
なお、注意点もあります。舌下免疫療法は花粉症の症状が出てから始めるとかえって症状を悪化させる恐れがあるため、花粉が飛んでいる時期に開始することはできません。治療を受けたい場合には、花粉症のシーズンが終わってから開始するようにしましょう。舌下免疫療法は、2014年から公的医療保険が適用されるようになっています。ただし、この処方は指定の講習を受けた医師にしかできないため、治療が受けられるクリニックは限られています。まずはかかりつけの医師に相談し、治療が可能かどうかを確認してみると良いでしょう。
現在、花粉症に悩まされている方や家族が花粉症にかかっているという方が多いかもしれません。花粉症によって仕事や私生活に大きな支障が出ているという方も少なくありません。
今回ご紹介した舌下免疫療法は、そんな花粉症の根本的な改善が期待でき、入院が不要なため、気軽に始められる療法です。長年の花粉症をなんとか改善したいと考えている方は、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。
※この記事は2017年2月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。