家計
先進医療特約とは? つける必要はある?

「先進医療」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。でも、具体的にどういうものかまで知っている人は少ないのでは? そして、先進医療の費用を保障する「先進医療特約」についても、同じことがいえそうです。そこで、先進医療とはどのようなものなのか、先進医療特約について紹介しましょう。
■先進医療は公的健康保険の対象にするか評価を行っている治療のこと
先進医療とは、将来、公的健康保険(健保)の対象とするかどうかの評価を行っている段階の治療のことです。「厚生労働大臣が定める高度な医療技術など」を用い、「定められた適応症の治療のため」に、「届け出をした病院」で受けるという要件があります。
随時、新しい技術の追加、また、削除が行われています。健保の対象になれば(俗に、保険がきくようになれば)、削除されます。2018年3月1日現在で103種類が認定されています。
先進医療には、AとBの区分があります。Aは「薬事法の承認が済んでいる技術。または、未承認でも、人体への影響が極めて小さい技術」、Bは「薬事法で未承認・適応外の薬剤や医療機器を使用する技術。または、使用しない場合でも有効性などの面から重点的な観察・評価が必要な技術」です。AとBそれぞれで、年間実施件数の多い順に、平均入院期間や費用などをまとめたものが下表です。
■先進医療の例
先進医療の区分 | 技術名 | 平均入院日数(日) | 年間実施件数 | 1件あたりの費用 | 実施医療機関数 |
A | 前眼部三次元画像解析 | 0.3 | 11,595 | 3,484 | 101 |
A | 陽子線治療 | 12.6 | 2,319 | 2,765,086 | 12 |
A | 重粒子線治療 | 7 | 1,558 | 3,149,172 | 5 |
B | 切除支援のための気管支鏡下肺マーキング法(微小肺病変) | 9.3 | 154 | 17,113 | 17 |
B | 内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下胃切除術(根治切除が可能な胃がん) | 13.4 | 117 | 1,083,843 | 13 |
B | 経皮的乳がんラジオ波焼灼療法(早期乳がん) | 5.4 | 109 | 153,312 | 8 |
※中央社会保険医療協議会「平成29年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」より

■先進医療の費用は全額が自己負担になる
日本では、健保対象の診療と対象外の診療を併用する「混合診療」は禁止されていますが、先進医療は例外的に併用を認められている技術です。そのことによって、健保対象の診療は、年齢と所得区分で決められている自己負担割合(1~3割)の分を負担し、先進医療の費用は全額を自己負担するしくみになっています。健保には高額療養費制度があり、自己負担した医療費が高額になった場合は、軽減されます。
具体例を1つ示しましょう。70歳未満の会社員(月収30万円)が、がんの治療で陽子線治療(費用は275万円)を受け、1か月(1日から15日まで入院)の間に健保対象の医療費が100万円かかった場合、医療費の負担は下記のようになります。
- 健保対象の医療費100万円のうち、3割の30万円を自己負担する
- 30万円のうち、21万2,570円は高額療養費制度が適用されて払わなくていい
- 本人の自己負担は、8万7,430円となる
- 8万7,430円に275万円(陽子線治療の費用)を合計した2,837,430円を自己負担する
2,837,430円に、入院時の食事代と差額ベッド代がかかる病室を希望した場合の費用、入院や入院前後の通院にかかった諸費用をプラスした金額が最終的な自己負担になります。
なお、陽子線治療と重粒子線治療の一部は、健保対象になっています。陽子線治療は小児がん、重粒子線治療は手術による切除が困難な骨軟部腫瘍は健保対象です。2018年4月から、切除が困難な骨軟部腫瘍は陽子線治療も、頭韻部のがん(対象外のがんもある)と前立腺がんは陽子線治療・重粒子線治療が対象になりました。高額な先進医療が健保の対象になると、その費用も含めて一部を負担すればよくなるので、自己負担額はぐっと下がります。
■先進医療特約はつけておくべき!
何らかの病気になり、先進医療を受けることになっても、費用が安いものであればさほど負担にならないでしょう。けれど、100万円を超えるようなものだと、受けるかどうか迷いが生じるかもしれません。そんなとき、先進医療特約をつけてあれば、迷わず選択でき助かります。
先進医療特約は、その名の通り、先進医療を受けたときの費用の実費を保障してくれる特約のこと。通算限度額は2,000万円の特約がほとんどです。費用以外に、交通費などに使える+αの保障がついているものもあります。 先進医療特約の特約保険料は月100円強なので、高額な先進医療を受けることになったときに備えて、つけておくべきです。医療保険やがん保険、医療関係の特約として死亡保障の保険などにつけられます。がん保険につけると、がんの治療のための先進医療が保障対象となるので、範囲が狭くなります。できれば、がん保険以外の保険につけましょう。
※このコラムは執筆者個人の見解であり、弊社の公式見解ではありません。 また、2018年4月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。
執筆者
小川千尋
ファイナンシャルプランナー(FP)、エディター&ライター、ハッピーエンディングプランナー、終活コンサルタント、整理収納アドバイザー
1994年FP資格取得。資格取得後、独立系FPとして、マネー誌や生命保険のムック、ウェブサイトなどの執筆・監修、セミナー講師、個人相談などで活動中。生命保険の商品動向に詳しい。
オールアバウト「生命保険ガイド」https://allabout.co.jp/gm/gp/240/library/