家計
家族信託ってどんなもの?

親が認知症になったら、親の入院費や介護費用さえ引き出せない!という話を聞いたことがありませんか? まだまだ大丈夫!と思っているうちに、対策を講じておくのが令和流。今回は、家族に財産の管理を委託する「家族信託」というしくみについて見ていきます。
■「家族信託」とは?
家族信託とは、預貯金や不動産などの資産を所有する人が老後生活や介護に必要な資金の管理・処分・給付を、予め信頼できる家族や親族に託すしくみです。家族信託の登場人物は下記です。

- 委託者……財産を受託者に引き渡し、託す行為を行う人。受託者に信託財産の管理・処分の指示も行う(高齢の親など)
- 受託者……委託者から財産を引き受け、信託の目的に従って管理・処分を行う。託される人(子どもなど)
- 受益者……信託財産を管理・処分、運用を行ったことで得られる利益を受ける人(本人、もしくは子や孫など)
(・家族信託監督人、運用指図者を定めることも可能)
財産が比較的少額な場合や、第三者を入れずに家庭内で財産管理を行いたい場合には家族信託が適しています。受託者を家族内から選ぶため、報酬は不要です。本人の意思確認手続きが不要なので、自宅の売却、賃貸物件の建て替え、不動産の買い替えなどの相続対策も、相続直前まで行うことが可能です。
■親が認知症になると、預貯金の引き出しもできなくなる!
日本は平均寿命が延びている中、介護が必要になる確率も高まり、認知症の人も増えています。認知症になると、財産の管理ができなくなり、金融機関からのお金の引き出しもストップされます。高齢者施設に入居しようにも、その費用を引き出すこともできません。もちろん自宅の売却もできません。成年後見人を立てればすむと考えがちですが、全ての財産は後見人の管理下に置かれ、50万円以上の支出や自宅の売却には、家庭裁判所の許可が必要になるのです。
成年後見人の約7割は弁護士や司法書士などの士業(専門職後見人)がつきます。
( 参考:内閣府 成年後見制度の現状 )
家庭裁判所がOKすれば親族が後見人になることも可能ですが、「成年後見監督人」が付き、いずれにせよ報酬が発生します。引き出しにも手間暇がかかり、思うようにいかないことも多々あります。
そこで、親の意思が明確なうちに家族信託を締結しておけば、本人の代わりに委託者である家族が財産管理をすることが可能になります。家族間なので報酬も不要です。親がアパートや賃貸マンションなどを所有していた場合は、修繕費用を引き出すこともできなくなるので、検討しておくのが有効です。
■孫の代までの相続を指定できる!
相続において、先祖代々の土地や家屋を、子、そして孫に承継したいと考えた場合、遺言では相続人を子どもに指定することはできますが、その子どもが死亡した後までの指定はできません。しかし、家族信託を利用すれば、子どもは相続した土地や家屋を売却処分できず、孫に承継することができます。つまり、二次相続時の指定も可能なのです。
相続において、先祖代々の土地や家屋を、子、そして孫に承継したいと考えた場合、遺言では相続人を子どもに指定することはできますが、その子どもが死亡した後までの指定はできません。しかし、家族信託を利用すれば、子どもは相続した土地や家屋を売却処分できず、孫に承継することができます。つまり、二次相続時の指定も可能なのです。
また、子どものいない夫婦の場合、夫が亡くなると妻が○○家先祖代々の土地や家屋を相続します。そして、妻の死亡後は、妻の兄弟姉妹が相続することになります。しかし、先祖代々の土地や家屋、家業を○○家の血筋を引く甥に継がせたいような場合は、家族信託を利用して、妻の死亡後は甥に継がせるという契約を締結しておくことでその思いが可能になります。
家族信託はメリットばかりではありません。収益物件を信託財産に入れた場合、赤字が出ても他の所得との損益通算はできない、税務申告の手間がかかる、など節税対策にはならないケースもあります。
○○家は将来的にこういう青写真で進んでもらいたいという強い意思が明確であることが前提です。その目的を達成するには家族信託が最適となれば、どのような形で財産管理や遺産承継を実行するかという計画を立て、契約書の作成、登記などの手続きを行います。遺留分の侵害にどう対処するかなど、個人では荷が重いでしょう。比較的新しい制度で、まだ専門家も多くはありませんが、家族信託に精通した、相談実績のある弁護士や司法書士に相談するのがよいでしょう。
※この記事は2019年5月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。