健康
入院時の差額ベッド代。払わなくてもいいケースがあるってホント?

入院時に個室や4人以下の部屋に入ると、差額ベッド代がかかります。実はこの差額ベッド代、状況によっては払わなくてもいい場合があることをご存じでしょうか。知っているだけで選択が変わってくるかもしれません。
■差額ベッド代とは?
病気やケガで入院したとき、6人部屋以上のいわゆる「大部屋」に入る分には、保険適用なので特別な自己負担はありません。しかし、
差額ベッド代がかかる病室を、正確には「特別療養環境室」といいますが、個室かどうかだけでなく、一定の要件を満たしたものが該当します。その要件は表1の通りで、病床数や面積、設備などに条件があり、これら全部を満たす部屋でないと、たとえ個室であっても差額ベッド代は請求できません。
表1 「特別療養環境室」の条件
また、受付窓口、待合室などの見やすい場所に「特別療養環境室」のベッド数や料金を掲示することも必要です。病院からきちんと説明を受け、その上で希望して入った場合のみ請求されます(同意書への署名も必要です)。
■平均額は1日6,188円
厚生労働省の報告によると、差額ベッド代がかかるのは、
差額ベッド代がかかる部屋のうち、1日10,800円を超える部屋も1割以上(12.9%)あります。著名な大学病院などになると、中には、1日数万円もする高額な個室もあるのは知られていますね。
出典:厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」平成29年
■払わなくてもいいのはどんな時?
実は、差額ベッド代は、本人や家族が「希望」した場合以外は支払う必要がありません。例えば、緊急入院などの際に、十分な説明もなく、費用も確認しないまま、「一般病棟が空いていないから」という理由で個室に入った場合などは、本来、対象外です。
2018年3月5日に厚生労働省から通知([保医発0305第6号 が出され、「差額ベッド代を求めてはならない場合」について、表2のように明記されているのです。
それは、
患者自身の自由な選択で「特別療養環境室」に入院した場合を除いて、差額ベッド代は請求されないことになっているのです。
ただし、当初は「治療上の必要」で個室に入って差額ベッド代が請求されなかったとしても、その後個室でなくてもよい状態になった段階で、希望を聞かれます。そのまま同じ個室を希望すれば、その段階からは差額ベッド代の対象になります。
表2 病院側が患者に差額ベッド代を請求できない例
- ①患者から同意書に署名をもらっていない場合(同意書に室料の記載がない等、内容が不十分な場合も含む)
- ②「治療上の必要性」から「特別療養環境室」に入院した場合
- 救急患者、術後患者等で、病状が重篤なため安静を必要とする、または常時監視を要し、適時適切な看護や介助を必要とする患者。
- 免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者。
- 集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者。
- ③病棟管理の必要性等から「特別療養環境室」に入院した場合(患者の選択でない場合)
- MRSA等に感染している患者で、主治医等が他の入院患者の院内感染を防止するため、実質的な患者の選択によらず入院させたとみられる場合
- 他の病室が満床であるため、特別療養環境室に入院させた場合
- *「治療上の必要性」から個室に入って差額ベッド代が請求されなかった場合でも、「差額ベッド代が請求できない事態」が改善した段階で個室を希望すれば、差額ベッド代の対象になります。
参照:厚生労働省の通知(保医発0305第6号)
■おわりに
入院や手術の際に、病院から「個室なら空いています」「個室に入ってください」などと言われたとしても、あわてて同意書を書かずに、病院としっかり話し合いましょう。厚生労働省の通知があることを踏まえた上で、それでも本当に自分が個室を希望するかどうか、よく検討した上で決めましょう。
一方で、「手術後は、他の患者やその家族に気を遣いたくないので、個室で静かに過ごしたい」という人もいます。個室や少人数の部屋は、大部屋に比べて快適で入院中のストレスも軽減されるはずです。それを見込んで、中には、「入院は絶対に個室に入る!」と希望して、医療保険の入院日額を高めにしている人もいます。
いずれにしても、医療保険の入院給付金や貯蓄でまかなえるか、その後の生活に支障は出ないかなど、冷静に考えて決めたいものですね。
※この記事は2019年9月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。