家計
相続法の改正で何がどう変わった?

相続法がほぼ40年ぶりに改正され、2019年から随時施行されています。「いつの間に変わったの!?」ということにならないよう、改正内容のうち4つを取り上げますので、そのポイントを押さえておきましょう。
■1・自筆証書遺言の一部が手書きでなくてもOKに!
自筆証書遺言は、以前はすべて手書きでなければ認められませんでしたが、2019年1月13日から、すでに、一部は手書きでなくても認められるようになりました。
手書きでなくてもよくなったのは、自筆証書遺言の財産目録部分です。
財産目録は、パソコンで作成して印刷したものや、不動産であれば登記事項証明書、預金であれば通帳のコピーをとって、財産目録として添付する、
といった形でもOKになりました。財産目録以外はすべて手書きのままですが、以前に比べれば、自筆証書遺言がより作成しやすくなりました。
さらに、2020年7月10日からは、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになります。遺言の有無も法務局で確認することができて、遺族にとっても助かります。
■2・亡くなった人の口座からの払出しが可能に!
以前は、ある人が亡くなると預金口座は凍結され、引き出せなくなっていました。口座にお金が入っていても、家族の生活費用のメイン口座だった場合、遺族の生活費が引き出せなかったり、あるいは、亡くなった人のローン返済ができなかったり、葬儀費用も出せないなどで、悲しみのさなか、金策に走り回るようなこともありえたのです。遺産分割協議が終わるまで、何カ月も引き出せなかったのです。
それが、2019年7月1日から変わりました。
法定相続分の3分の1までの預貯金は、遺産分割協議が終わる前でも、払出しできるようになったのです(150万円まで)。
大黒柱に万が一のことが起きたときでも、お金のことで追い打ちをかけられるようなことはなくなりそうですね。もちろん、口座にお金がなければ、状況は変わりませんが…。
■3・介護で貢献した親族に「特別寄与料」
これまで、法定相続人に該当しない嫁や婿、甥や姪といった立場で、一生懸命に看病したり、介護に貢献しても、金銭的に報われることはありませんでしたが、この点も変更されました。
2019年7月1日からは、亡くなった人の介護・看護を、相続人でない親族が「無償で」行っていた場合には、相続人に対して「特別寄与料」を請求できるようになったのです。
残念ながら、現実に請求できる額は決して大きな額ではないようです。
■4・夫婦間の自宅贈与は遺産分割の対象外に
結婚期間が20年以上となる夫婦同士であれば、自宅や自宅の購入資金を贈与しても、2,000万円までは非課税です。これは以前からそうなのですが、問題は、その後、相続が発生したときの扱いです。
以前だと、この制度を使って生前贈与した分は、単に「遺産を先に渡しただけ」とみなされ、もらった住宅分も含めて遺産分割が行われていました。たとえば、相続人が妻(結婚20年以上)と息子1人の2人で、相続財産が自宅2,000万円と預貯金2,000万円の計4,000万円だったとします。夫は亡くなる前に、自宅を妻に贈与したものの、夫の死後に法定相続分通りに遺産を分けると、2分の1なので、家だけしか受け取れませんでした。一方、息子が預貯金の2,000万円を相続していたのです。これでは高齢になった妻が暮らしていけません。そのため、
2019年7月1日以降は、この制度で贈与した住宅分は、相続財産に戻さずに遺産分割が行われることになりました。
■まとめ
今回の相続法の改正は、高齢化時代により長生きの妻の生活を保護する狙いが強いようです。家族で相続や介護について話し合う際には、相続法の改正の内容も押さえておきたいものです。
参考:政府広報オンライン
※この記事は2019年9月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。