教育・子育て
奨学金と教育ローン、選ぶならどっち?特徴や違いを比較しながら徹底解説

子どもの大学進学を前に、奨学金や教育ローンの利用を考えている親御さんもいらっしゃるでしょう。
大学入学時期に照準をあわせて教育費を貯める家庭は多いですが、実際には学習塾代や受験費用など、進学する前にも結構な費用がかかるものです。
そのため「大学進学に用意していた貯蓄を取り崩すことになり、肝心の大学費用が足りなくなった」や「進学前から想像以上に支出が多く、貯蓄計画が狂った」という家庭は少なくありません。
そこで当記事では、大学費用に活用できる奨学金や教育ローンの内容や違いについて、わかりやすく比較しながら解説していきます。
「大学進学まで数年しかないのに、教育費が足りない」と焦っている親御さんは、ぜひ参考になさってください。
■奨学金とは
奨学金とは、学生に給付・貸与される学資金のことで、おもに専門学校や大学、短期大学への進学時に利用できます。
日本には多くの奨学金制度があり、その実施団体は国や自治体、民間団体、大学などさまざまです。数ある奨学金制度の中でもっとも多くの学生が利用していて、一般的にも知られているのは日本学生支援機構の奨学金制度です。
日本学生支援機構の奨学金には、
- 返す義務のない「給付型奨学金」や授業料減免制度
- 返す義務のある「貸与型奨学金」
の2種類があります。
どうせなら、返さなくて良い給付型奨学金を利用したいですよね。
しかし給付型奨学金の対象世帯は住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯とされていて、たとえば両親・本人(18歳)・中学生の家族4人世帯の場合、目安年収380万円までの世帯しか利用できません。
出典:「学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度」より「どんな学生が対象になる?(支援の対象者)」(文部科学省)
2020年4月開始の大学無償化では給付型奨学金の制度拡充が話題になりましたが、それでも低所得世帯以外が気軽に利用するのは難しいのが現状です。
そのため日本学生支援機構で実際に多く利用されているのは、返済義務のある「貸与型奨学金」です。
貸与型奨学金の特徴
日本学生支援機構の貸与型奨学金の特徴は
- 大学や専門学校に必要な費用を低金利か無金利で貸与できる
- 在学中は無利息で、卒業後に返済が始まる
- 奨学金は毎月分割で受け取る
- 卒業後、返済義務を背負うのは学生本人(子ども)
の4つです。
金利の低さは特筆すべきポイントで、2020年1月度の貸与利率は年0.002%~0.077%という圧倒的低金利になっています。
このように貸与型奨学金は低金利で利用できる点が魅力ですが、「子どもが借金を背負う」点は要注意です。
貸与型奨学金を利用する際は、卒業後の返済義務について親子でしっかり理解しておくことが大切ですよ。
■教育ローンとは
教育ローンとは、子どもの教育費・学費に関連した出費限定のローンです。
日本の教育ローンは大きく分けて
- 国が貸付を行う教育ローン(教育一般貸付)
- 民間の金融機関が貸付を行う民間の教育ローン
このうち、とくに有名なのは低金利で利用できる国の教育ローンです。
国の教育ローンの特徴
国の教育ローンの特徴は、
- 奨学金より金利は高めだが、民間教育ローンよりは低金利で利用でき、全期間固定金利
- 最高350万円まで借入れでき、一括で受け取れる
- 1年中いつでも利用申し込みできる
- 返済義務を背負うのは保護者(親)
教育ローンの金利は2020年度時点で年1.66%なので、貸与型奨学金と比べるとやや高めです。それでも民間の教育ローンやカードローンに比べると低金利で利用でき、まとまった資金を受け取れるのは魅力です。
ただし教育ローンの返済者は親になるため、親の年齢によっては長期のローンを組むと返済途中に定年を迎える可能性もあります。
教育ローンを組むときは定年前に完済できるようにするなど、老後資金に影響のない範囲で返済計画を立てることが大切ですよ。
■奨学金と教育ローンの違いは?どっちにすべき?
奨学金と教育ローンの違いは?どっちにすべき?
貸与型奨学金と教育ローンはいずれも教育費をまかなうための借金ですが、返済者や資金の受け取り方などに大きな違いがあります。
<貸与型奨学金と教育ローンの違い>
奨学金<貸与型奨学金> | 教育ローン<国の教育ローン> | |
---|---|---|
運営機関 | 日本学生支援機構 | 日本政策金融公庫 |
返済者 | 子ども | 親(保護者) |
資金の受け取り方 | 毎月、分割で受け取る | 一括で受け取る |
融資上限額 | 大学の場合、月額12万円まで | 一括で350万円まで |
金利 | 固定金利:0.077%変動金利:年0.002%(2020年1月時点) | 固定金利:年1.66%(2020年度時点) |
申し込み | 予約採用と在学採用があり、いずれも申し込み時期が決まっている | 1年中いつでもできる |
奨学金も教育ローンもそれぞれ一長一短で、一概にどちらが優れているとは言えません。
奨学金の返済者は子どもですが、圧倒的な低金利は大きな魅力です。
教育ローンは奨学金より金利が高めですが、まとまった資金を受け取れる、親が返済者という手軽さがあります。
いずれにしても、ある程度資金を借りると返済期間も長くなるので、返済者が誰であれ無理のない返済計画をしっかり立てなければいけません。
また教育費の支出内容によっても、分割が良いか一括が良いか変わってきます。
教育費とひと口に言っても授業料などの学費に関連するものから、離れた大学へ通うための下宿費用までさまざまものがあります。
各家庭でとくに補いたい支出は何で、いくら必要なのか。借りた資金は何年かけて、どうやって返していくのか。借入れの目的と返済方法を明確にしたうえで、適した方法を選択しましょう。
また貸与型奨学金と国の教育ローンは併用することも可能です。
どちらか一方に絞り込まないといけないわけではないので、併用することもふまえたうえで、最適な方法を検討してください。
■まとめ
奨学金も教育ローンも、さまざまな種類があります。
中でも広く利用されているのは日本学生支援機構の貸与型奨学金と国の教育ローンで、いずれも教育費の支出に限定して借入れする借金、ローンです。
どちらにしても返済義務があるため、活用する際は以下のポイントに気をつけてください。
- 貸与型奨学金は低金利が魅力だが、子どもが返済者で申し込み時期も限定されている
- 教育ローンは親が返済者で一括受取りができるなど使い勝手が良いが、奨学金より金利は高めになっている
- どちらを利用するにしても、備えたい教育費の種類や必要な時期、借りた資金の返済プランを明確にし、適した方法を選択することが大切
- 貸与型奨学金と国の教育ローンは併用することも可能
大切なのはどちらが良いか?ではなく「どちらが教育費の支出に適しているか」「返済していきやすいか」です。それぞれの違いや特徴をふまえたうえで、各家庭の最適な利用方法を見つけてくださいね。
※この記事は2020年4月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。