経済
今さら聞けない「2025年問題」と「2025年の崖」が現役世代へ与える影響とは
「2025年問題」や「2025年の崖」など、2025年にはさまざまな問題が起こると予想されています。
とはいえ、日々仕事や家事、育児に追われていると「この先(2025年)のことよりも毎日の生活で精一杯」というのが本音ではないでしょうか。
しかし2025年問題や2025年の崖は、われわれ現役世代にも大きな影響を与えます。
そのため「関係ない」ではなく、簡単にでも知っておくことが大切ですよ。
当記事では、今話題の2025年問題と2025年の崖が現役世代に与える影響について、わかりやすく解説していきます。
「2025年問題や2025年の崖が話題だけど、よくわからない」「自分たちにどんな関係があるのか知りたい」という方は、ぜひ参考になさってください。
■2025年問題と2025年の崖は別問題
「2025年問題」や「2025年の崖」はセットで話題になることが多いのですが、実は、この2つは別々の問題です。
2025年問題は超高齢化、2025年の崖は日本企業のITシステムの老朽化が引き起こす問題といわれています。
それぞれ、わかりやすく解説しましょう。
「2025年問題」は超高齢化が引き起こす問題
2025年問題とは、人口の多い団塊の世代が2025年ごろに75歳以上の後期高齢者となることで、予想されている問題です。
簡単にいえば、超高齢社会の到来により、社会全体のバランスが大きく崩れることが問題視されているのです。
2025年には国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になることが予想されています。
高齢者が増えると、それだけ医療・介護・福祉・年金の需要が拡大しますよね。
人口ボリューム層である高齢者の需要を支えるためには、現役世代の人員やサービス体制の整備・拡充が不可欠です。
さらに、需要を満たすだけの給付=社会保障費の急増も避けられません。
ただでさえ少子化で若者の数が減少している中で、こうした種々の問題が噴出するのが、
「2025年問題」なのです。
参考:「日本の高齢者人口の見通しについて」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link1-1.pdf
「なぜ今、改革が必要なの?」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/kaikaku_1.html
「2025年の崖」はITシステムの老化が引き起こす問題
2025年の崖とは、日本企業のITシステムが老朽化することで予想されている問題です。
簡単にいえば、現在日本企業が使っている既存のITシステム(=レガシーシステム)は老朽化や複雑化、ブラックボックス化が課題となっています。
現在の状況を改善できなければ、いずれは
- デジタル競争で生き残れず、システムの維持コストが膨らみ、システムトラブルなどのITリスクが高まる
- 2025年以降、最大年12兆円以上の経済的損失が発生する
という可能性が指摘されています。
この問題が「2025年の崖」です。
もともとは2018年に経済産業省が発表した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」で言及された言葉で、このレポートはIT業界に大きな衝撃を与えました。
参考:「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ 」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
■2025年の諸問題が現役世代に与える影響とは?
2025年問題や2025年の崖の話を聞いても、「介護や医療分野の仕事ではないし、自分には関係ない」「ITシステムの改善は、経営者の問題では」と思う方がいるかもしれません。
しかし2025年に起こりうる諸問題は、すべての現役世代に影響があります。
具体的には、2025年問題により
- 各種社会保険料の引き上げ
- 公的年金受給開始年齢の引き上げ
- 消費税率のさらなる引き上げ
- 中小企業の倒産・廃業
大切なポイントなので、それぞれくわしく解説していきますね。
2025年問題が与える影響
2025年問題の焦点は、超高齢化による医療・介護・福祉・年金など社会保障費の急増です。
社会保障費のおもな財源は国民の税金や社会保険料収入ですが、近年は少子高齢化により収入と保障(給付)の差額が広がり続けています。
その差額を埋めるため、国は国債を発行して保障費を負担しています。
つまり国の財政赤字の大きな要因は、足りない社会保障費を埋めるための国債発行(借金)なのです。
そして2019年10月、こうした社会保障制度のほころびを改革するべく実施されたのが、消費税率の引き上げです。
消費税増税による増収分は全額社会保障費に充てられ、幼児教育・保育の無償化など、次世代の働き手を増やすためにさまざまな政策が実施されました。
しかし長く続いている少子化が、これらの政策で簡単に改善するものでしょうか。
少子高齢化がもっと加速すれば、社会保障費の負担を賄うため、さらなる消費税率引き上げが行われるかもしれません。
消費税だけではなく、社会保険料が引き上げになる可能性もあります。
社会保険料のうち、年金保険料の引き上げはすでに打ち止めとなっていますが、2020年度には国民健康保険・介護保険料の年間上限額の引き上げが行われます。
また公的年金に関しては、受給開始年齢が65歳から引き上げになるという見方もあり、年金を受け取れる時期が遅くなるかもしれません。
政府が少子化改善のために取り組んでいる種々の政策が実るかどうかはわかりません。ただ、もし思ったような効果が見られなければ、
- さらなる税金、社会保険料アップで手取り収入が目減りする
- 公的年金の受給開始が遅くなり、定年後も働き続ける必要がある
ことになるでしょう。
このように、2025年問題は現役世代すべてに大きな影響を与えます。
参考:「消費税率引き上げについて」(財務省)
https://www.mof.go.jp/consumption_tax/
2025年の崖が与える影響
2025年の崖の焦点は、各企業の複雑化したITシステム(レガシーシステム)が抱えるITリスクです。
団塊の世代が高齢者になれば、長い間ITシステムを管理してきた人材が次々と現場を離れることになります。
その際に引き継げる優秀な人材がいなければ、さまざまなITリスクに対処できず、いずれは経営が破綻する可能性も出てきます。
中小企業の倒産や廃業は、中小企業を下請けに取引している大企業や、中小企業からの発注が多い個人事業主にとって大きな損失です。
つまり、2025年の崖はIT業界の人間だけではなく、働くすべての方の環境に影響を与える可能性があるのです。
■まとめ
2025年問題も2025年の崖も、現役世代に与える影響はゼロではないということがおわかりいただけたと思います。
少子高齢化の進行状況によってはさらなる社会保険料の引き上げ、消費税10%以上の増税が行われるでしょう。
何もしなければ、「給与は変わらないのに税金など引かれる金額ばかり増え、手取り収入がどんどん目減りしていく」ことになるのです。
また2025年の崖で中小企業が倒産や廃業することになれば、大企業勤めの方にも個人事業主の方にも、少なからず影響があります。
将来の社会保障制度がどうなるかは誰にもわかりませんし、当記事で記載している可能性はあくまで予測です。
今確実にできるのは、現実を見据えて世の中の制度やしくみに関する正しい理解をし、さらに「個人で稼げるスキル」を身に着け、少しずつ手取り収入を増やしていくことではないでしょうか。
今いる環境に依存せず、どこでも、高齢になっても稼げる力を身に着けることができれば、将来どんな変化が訪れたとしても、社会の中で生き抜くことができるはずです。
今は副業を始めてみる、転職に有効な資格を取得してみるなど、できることから始めていきましょう。
※この記事は2020年5月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。