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【終活】変わりゆく葬儀の形……最近よく聞く「直葬」とは?

少子化や高齢化が進む昨今、家族の在り方の変容は昔ながらの慣習や文化にも大きな変化をもたらしています。そのひとつが、葬儀です。近年では、葬儀の方法も多様化しており、一昔前にはなかった新しい形の葬儀が登場してきています。今回取り上げるのは、なかでも注目されている「直葬」について。直葬の基本から、メリット、直葬を行う際に注意すべき点などについて知っておきましょう。
■直葬とは?
直葬とは、宗教的な儀式などを省き、火葬のみを執り行う葬儀形式のことです。日本の一般的な葬儀では、人が亡くなると通夜や告別式などの儀式が催され、家族や親族、友人知人が故人との最期の時間を過ごしたり、お坊さんがお経を読んで供養を行ったりします。そしてその後、火葬場に移動し、火葬・骨上げというのが基本の流れとなります。しかし、直葬の場合は、通夜や告別式がありません。直葬では、息を引き取った後、葬儀社に依頼をして遺体安置を行い(死後24時間以上の遺体安置は、法律によって義務付けられています)、その後に出棺、火葬場へ移動して火葬、骨上げが行われます。
もともと、直葬は、身寄りのない人や身元不明の人、遺族が葬儀費用を負担できない場合などに選択される葬儀形態でした。しかし、現在では、故人の意思によって「わざわざ葬儀を行わなくていい」として直葬を選ぶケースも増えています。例えば、「終活」のひとつとして自分が生きているうちに「生前葬」でお世話になった人との交流を持っておき、亡くなった際の葬儀を省略して、直葬を選ぶこともあるようです。このほか、高齢化や少子化によって身寄りのないお年寄りが増えたことも、直葬が増加した理由のひとつとなっています。
なお、家族や親族、友人知人、仕事関係者などが集まる昔ながらの葬儀形態ではない現代的な葬儀の形として、家族のみ、またはごく親しい間柄の人のみで行う「家族葬」というものもありますが、家族葬では規模こそ小さいながらも通夜や告別式といった儀式が行われます。
■直葬のメリットは?
直葬のメリットとしては、以下のような項目があげられます。
1.費用が安い
直葬は、とてもシンプルな葬儀です。そのため、一般的な葬儀よりも費用は安く、10万~20万円程度で執り行うことが可能です。経済的な事情で葬儀費用を負担できないという場合には、直葬という選択肢は大きな助けとなります。
2.葬儀の段取りや参列者への対応、香典返しなどの必要がない
遺族の口からしばしば聞かれるのが、「葬儀の手配や段取り、参列者への対応などに追われて、最期に故人ときちんと向き合う時間がなかった」というセリフ。お葬式をするとなると、葬儀社や関係者への連絡、日取りの設定、香典返しの手配など、遺族にはしなければならないことがたくさんあります。そういった葬儀にまつわるもろもろの負担を軽減できるというのも、直葬のメリットだといえるでしょう。
■直葬を選ぶ際の注意点は?
経済的・精神的・時間的な負担を軽減できるというのが直葬のメリットですが、注意すべき点もあります。
1.親族や関係者に対して、理解と了承を得ておく必要がある
たとえ故人の意思や遺族の事情であっても、親族や友人知人、会社関係者などに対して直葬を選ぶことの説明をきちんと行ったうえで了承を得ておきましょう。直葬は家族や近親者のみで行われるため、故人と親しかった友人知人から不満が出ることがあるかもしれません。そういった場合には、後日弔問の機会を設けるなどの配慮が必要です。
2.菩提寺に納骨できるか確認しておく必要がある
日本の昔ながらの風習では、人が亡くなると、先祖代々の遺骨が納められているお寺(菩提寺)のお坊さんが葬儀に出席して読経を行ったり戒名を授けたりするのが一般的です。また、火葬後の遺骨は、菩提寺にあるお墓に納骨します。しかし、直葬を選んだ場合には通夜や葬式を行いませんので、お坊さんに読経してもらったり戒名をもらったりといったこともありません。そのため、菩提寺によっては、宗教的儀式を省いて直葬した遺骨を納めることを快く思わない場合も考えられます。このようなトラブルを避けるために、古くから付き合いのある菩提寺があるのであれば、直葬でも納骨できるか事前に相談・確認することが望ましいといえます。
今回は、葬儀の形のひとつ「直葬」についてご紹介しました。人生のエンディングをどう迎えるのか、考え方は人それぞれ。自分自身やご家族の葬儀について、終活のひとつとして、一度じっくり考えてみてもいいかもしれません。
※この記事は2017年1月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。