家計
貯金が趣味だけど将来が不安!そんなときは「目的」と「置き場所」を考えてみよう
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貯金が趣味といえるほど好きなのに、「いくら貯めても将来が不安になる」と感じている方もいるのではないでしょうか。不安を感じる原因は、お金の「目的」と「置き場所」が決まっておらず、やみくもに貯めてしまっているからかもしれません。人はいずれ老後を迎え、いつか働けなくなります。お金はいくらあっても困りませんが、貯金そのものを楽しむことは、十分な金額を貯められるというメリットがある一方で、お金を使って残高を減らすことをストレスに感じるというデメリットもあるのです。今回は、お金の「目的」と「置き場所」を考えた貯金をする方法について解説します。
「趣味は貯金」という方は多い?
「趣味」といえるほど貯金に楽しさを見出している方は、正確なデータこそないものの、決して少ないわけではありません。インターネットをみると、貯金が趣味であることについて「よいことではない」と感じ、質問投稿サイトでアドバイスを仰いでいる様子も見受けられます。また、貯金を趣味と公言し、動画サイトで節約チャンネルを精力的に運営している方もいます。
貯金に対する価値観がどうであれ、貯金を「趣味」と感じている方は、決して少なくないのです。お金は自分の求めるモノや経験を得るコトに欠かせません。趣味とまではいわなくても、ふと目に入った通帳の残高金額が思ったよりも多いとき、無性に嬉しくなった……という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
予期せぬ事態が起こったとき、まとまった貯金があれば、人生の選択肢が増えます。将来の備えという意味でも、貯金はとても大切な習慣です。しかし、「金額」の増減にこだわってしまうと、貯金という趣味は人生の選択肢を減らしてしまいかねません。
ひたすら貯金をするデメリット
貯金とは、主に現金を貯めることを指します。いつでも使える現金をしっかり貯めておくのも大切ですが、貯金に全力を注いでしまうことには、デメリットもあります。
額面を減らすことに抵抗を感じる
貯金とは将来の備えです。しかし、はじめは貯金額を確認するだけだったとしても、次第に「通帳上の金額を増やすこと」が目的にすり替わってしまうことがあります。これが、貯金が持つデメリットです。まとまった貯金には、安心感があります。しかし、将来に備えることではなく、「通帳の金額が増えること」がモチベーションになると、残高が減ることに対して抵抗感を覚えるようになってしまいます。
生活に必要なささやかな買い物はできても、必要以上の買い物をすることを躊躇するようになるでしょう。たとえば、なくても生活には困らないリフレッシュのための贅沢、新しいチャレンジのための勉強代、子供との思い出作り、家族や友人へのプレゼントなどが挙げられます。貯金にのめり込みすぎるデメリットは、人生をより豊かにするための出費を「もったいない」と感じるようになってしまうことです。
預金はインフレで価値が下がる
預金だけで資産形成をすると、インフレを迎えたときに、すべての資産価値が下がってしまいます。現金を預けておく預金は、ほかの金融商品より価値が下がりにくく、安定した資産ですが、物価上昇に対応できないというリスクがあります。つまり、インフレによって物価が上がると、現金の価値は実質的に下がってしまうのです。
たとえば、昨日まで100円で買えたお菓子が、200円に値上げされるようなインフレが起きても、現金の100円は変わらず100円の価値のままです。しかし、インフレ時に現金でお菓子を買うには、200円を出すしかありません。このように、実質的に現金の価値が下がってしまうことがあるのです。
貯めるなら「目的」と「置き場所」を考えてみよう
コツコツ貯めることは資産形成に欠かせませんが、やみくもに貯めるのではなく、まずはお金の用途を定めましょう。また、「現金は元本割れしないから安心」、「投資はリスクがあるから手を出さない」と決めつけるのも良くありません。
現金もインフレによって価値が下がるリスクがあります。お金を増やしておかないと、結婚・出産子供の教育・住宅購入・老後の生活といったライフイベントが訪れたときに、必要な金額を用意できない可能性もあります。いつまでにいくら必要なのか計算したうえで、どのような状況でも資産を分配するという発想で、お金を貯めていきましょう。ここでは、お金の「目的」の定め方と、お金の「置き場所」の考え方について紹介します。
貯金は「目的別」に管理しよう
貯金をするとき、普段はどのようにお金を管理していますか?「収入も支出も1つの銀行口座に入れている」という方もいれば、「支出用と貯蓄用で口座を分けている」という方もいるかもしれません。しかし、お金の使い道が定まっていないまま貯め続けると、いくら貯めても不安が拭えなかったり、一度手を付けたら際限なく使いこんでしまったりする可能性があります。必要になったタイミングでお金を使えるように、まずはお金を「日常生活資金」「生活防衛資金」「ライフイベント準備資金」「老後資金」の4つに分けてみましょう。
<使用目的と金額の目安や分類>
使用目的 | 金額の目安や分類 |
---|---|
日常生活資金 | 生活費の1~1.5か月分 |
生活防衛資金 | 生活費の6~12か月分 |
ライフイベント準備資金 | 3年以内に発生するライフイベント用の資金 (結婚費用・住宅ローンの頭金・教育資金など) |
老後資金 | 上記以外の資金 |
「貯金計画を立てる前に、家計の見直しを行いたい!」という方や、「今後どのようなライフイベントがあるのかピンとこない」という方は、お金のプロであるファイナンシャル・プランナー(FP)に相談するという方法もあります。
「FPナビ」では、お金の専門家であるFPに無料で相談できるサービスを行っています。家計の見直しをご検討中の方は、こちらの「家計のお悩みはFPにご相談ください」をご覧のうえ、ぜひFPの無料相談をご予約ください。
日常生活資金
ふだんの生活費を入れておく口座を用意します。この口座に入れておく金額は、生活費の1~1.5か月分が目安です。たとえば、手取りが35万円で、生活費が月額20万円の場合は、月々の生活費の1~1.5倍の20~30万円程度を「日常生活資金」の口座に入れておきます。2か月以上の生活費を入れても問題ないですが、支出のコントロールに慣れていない場合は、生活費をあるだけ使ってしまう可能性もあります。支出をコントロールしたい場合は、多くても1.5か月分を目安に入れておきましょう。
生活防衛資金
何事もなく健やかに過ごせればよいのですが、ときには不測の事態に陥ることもあります。たとえば、予期せぬ病気やケガが起きたとき、自然災害で自宅に大きな損害が出たときには、まとまったお金が必要になるかもしれません。また、いきなり職を失ってしまえば、収入源が絶たれてしまい、備えがなければ生活もままならなくなります。そんな不測の事態に備えるためのお金が「生活防衛資金」です。
金額の目安は、生活費の6~12か月分。生活防衛資金は、収入が途絶えてもしばらく生活していくための資金源です。そのため、家族構成によって、準備しておくべき金額が変わってきます。
単身・夫婦世帯の場合、生活費の6か月程度を用意しましょう。失業時には次の仕事を探すことも大切ですが、職探し中に暮らしていけるだけの貯金も必要です。病気・ケガをしたときには保険金を受け取れますが、保険金が下りるまで時間がかかるため、それまで余裕を持って暮らせるような蓄えがあると安心です。
一方、子供がいるファミリー世帯の場合は、もう少し多めに用意しておくと安心でしょう。子供を養育していて、住宅ローンの支払いを抱えている世帯も多く、いざというときも生活レベルを下げて生活を切り詰めることが、簡単にはいかないからです。また、子供が小さすぎて、働くのが難しいというケースもあります。単身・夫婦世帯よりも月々の支払いが多いファミリー世帯は、生活費の12か月分を目安に貯めておくと安心です。
ライフイベント準備資金
数年後に予定しているライフイベントのためのお金です。ライフイベントを予定していない場合は、貯金しておく必要はありません。結婚・出産・子供の教育費・住宅購入費などは、まとまった金額が必要になるケースが多いので、3年くらい前から準備しておくことで、余裕を持ってライフイベントを迎えられます。
<ライフイベント別費用の目安>
ライフイベントの例 | 費用の目安 | 概要 |
---|---|---|
結婚費用 | 300~400万円 | 挙式、披露宴・ウエディングパーティーにかかった費用(※1) |
出産費用 | 46万円程 | 出産費用の総額(※2) |
教育費 | 1,000万円程 | 子供1人あたりの総額 【幼稚園~高校まで公立(※3)、大学のみ私立(※4)】 |
住宅購入費用 | 3,500~4,500万円 | 新築マンションや注文住宅、建売住宅の場合(※5) |
老後資金
「日常生活資金」「生活防衛資金」「ライフイベント準備資金」以外の余剰金は、この「老後資金」に振り分けておきます。そうはいっても、老後までにどれくらいの資金が必要か、見当がつかない方もいるかもしれません。
定年後の生活では、「年金」が主な収入となり、現役時代よりも収入は減少します。支出としては、毎月の「生活費」、介護が必要になったときには「介護費用」がかかります。また、住み替えや自宅のリフォーム、結婚費用など子供への援助もあるかもしれません。老後資金は、老後の収入と「退職金」などの資産、これらの支出を考慮したうえで、不足分を備えるとよいでしょう。
ライフイベントの例 | 費用の目安 | 概要 |
---|---|---|
老後の生活費 | 月26万円程 | 世帯主が65歳以上の無職世帯(二人)の月ごとの実支出(※6) |
老後のゆとりのための上乗せ額 | 月14万円程 | 経済的にゆとりのある老後生活をおくるための費用(※7) |
介護費用 | 580万円程 | 介護一時金は平均74万円、月々の介護費用は8.3万円 介護を始めてからの期間は平均61.1ヶ月(5年2カ月)(※8) |
子供の結婚必要 | 100~180万円 | 挙式、披露宴・ウエディングパーティー費用として親・親族からの援助(※9) |
中古マンション購入費用 | 2,200~3,300万円 | 所要資金の平均 東海圏2,205万円、首都圏3,246万円(※10) |
「置き場所」を変えてお金を増やそう
資産形成の一環として投資をしたほうがよいといわれるのは、預金をしてもほとんど利息がつかない超低金利時代だから、という理由だけではありません。預金はインフレで価値が目減りする資産であり、物価の上昇に合わせて資産を増やさないと実質的に損をするからです。
現金は、元本割れのない安定した資産ですが、インフレリスクを考えると安全とは断言できません。一方、株式投資は価格変動の激しい資産であり、元本割れが起こる可能性もありますが、インフレが起きても価値が下がりにくいという特徴があります。特定の資産に依存するのではなく、金融資産ごとの特徴を踏まえたうえで、資産形成を進めることが大切です。
お金は「貯金」「投資」「保険」という3つの置き場所があり、目的や用途に合わせて適切な場所に置く必要があります。以下を参考に、貯める目的に合わせてお金の「置き場所」を探してみましょう。
<お金の置き場所>
置き場所 | 具体例 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
貯金 | ・タンス貯金 ・金融機関への預金 など | ・必要なときにすぐ使える ・気軽に貯められる | ・金利が低い ・物価上昇に弱い |
投資 | ・投資信託 ・不動産投資信託(J-REIT) ・個別株 など | ・お金がプラスになることもある ・運用方法によってはすぐ引き出せる ・税制面で有利な場合もある (NISAやiDeCoなど) | ・マイナスになることもある ・投資先を選ぶ必要がある ・運用に手間がかかる商品もある |
保険 | ・個人年金保険 ・終身保険 ・学資保険 など | ・保障を受けられる ・毎月一定額を貯蓄できる(保険料として) ・税制面で有利 | ・利率が低い ・満期までお金が使えない ・早期解約するとマイナスになる |
貯めるだけではなく「増やす」選択肢も必要
資産形成の基本は、コツコツとお金を貯めることです。貯金を「趣味」と断言できるほど楽しめるのは、決して悪いことではありません。現金・預金だけで貯めようとするのではなく、投資で運用したり、保険を活用して「増やす」ことにも目を向けてみましょう。
しかし、投資や保険の必要性は頭で分かっているつもりでも、行動に移すのはなかなか難しいものです。どのようにして資産形成をすればいいのか悩んでいる方は、家計管理のプロであるファイナンシャル・プランナー(FP)へ相談してみるという方法も選択肢のひとつです。
「FPナビ」では、FPに無料で相談できるサービスを行っています。ご相談は何度でも無料なので、「家計の見直しで気になる点や改善したいポイントを見つけたい」「将来のために資産形成をしたい」とお考えの方は、ぜひこちらの「家計のお悩みはFPにご相談ください」をご覧いただき、お気軽にご相談ください。
出典
(※1)(※9)ゼクシィ結婚トレンド調査2021調べ(ブライダル総研)
https://souken.zexy.net/research_news/trend.html
(※2)第136回 社会保障審議会医療保険部会 議事次第(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000729683.pdf
(※3)「平成30年度子供の学習費調査の結果について」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_01.pdf
(※4)「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031_00004.htm
(※5)(※10)「2020年度フラット35利用者調査」(住宅金融支援機構)
https://www.jhf.go.jp/files/400357456.pdf
(※6)「2021年度家計調査報告(家計収支編)」(総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.htm
(※7)「令和元年度「生活保障に関する調査」(公益財団法人生命保険文化センター)
https://www.jili.or.jp/research/report/chousa10th.html
(※8)「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」(公益財団法人生命保険文化センター)
https://www.jili.or.jp/research/report/zenkokujittai.html