住まい
住宅ローンの頭金、払いすぎると苦労する!?

住宅ローンの頭金は、「多ければ多いほど後が楽」と思っていませんか?
実は、無理して頭金を払うと、後で痛い目を見るおそれがあるのです。
住宅ローンの組み方には、さまざまな選択肢があります。
安心・確実に住宅ローンを支払っていくためのベストな頭金はいくらなのか、どのように返済していけば良いのかを考えていきましょう。
■スタートが良くてもリタイアしたら意味がない
「頭金は払えるときにできるだけ払っておきたい」
その気持ちはわかりますが、住宅を購入するに当たって、最初に無理して頭金を払うと、それだけ預貯金が少なくなることを忘れてはいけません。しっかり返済プランを組んだつもりでも、病気や子どもの進学、転職や勤務先の業績悪化による急な収入減少など、人生には思わぬアクシデントが起こりえます。そのようなとき、十分な蓄えがなくて月々の返済ができなくなってしまったら、せっかく購入した住宅を手放さざるをえなくなるかもしれません。
住宅ローン返済は、スタートダッシュよりも完走することが大切なマラソンのようなものです。
頭金を多く払うことよりも、多少のアクシデントに見舞われても対応できるだけの資産を手元に残し、最後まで返済できるプランを立てることを重視しましょう。
■「頭金は2割」の時代は終わった
頭金に対する考え方が変わったことには、近年の日本経済の低金利状態も関係しています。かつて、住宅ローンの金利が高かった頃は、できるだけ頭金を払って、借入額を少しでも減らすことが重要視されました。それゆえ、「頭金は物件価格の2割は用意したほうが良い」という考え方が浸透していました。
ですが近年では、日本経済の金利が全体的に低く、住宅ローンの金利も低下しています。そのため、借入金額が多少増えても、利息の額が大きく変わるとは限らないのです。
その一方で、金利が低いため資産を増やすことが難しく、頭金を貯めるのが難しい状況となっています。ですから、マイホームを持つためには、頭金を多く支払うことよりも、「たとえ頭金が少なくても、確実に返済していくプランを考えること」が重要となります。
では、頭金はゼロ円でも良いのでしょうか?
実は、頭金を払うことには、「住宅ローンの金利が優遇される」という意味もあります。かつては、これらの優遇制度は、頭金を2割以上支払うと受けられるというものが主流でした。
ですが近年では、頭金1割で優遇金利が適用される住宅ローンも増えてきています。ですから、住宅ローン低金利時代の今は、頭金1割で住宅ローンを組むことも、1つの選択肢として検討してみると良いでしょう。
■繰り上げ返済で、返済プランの幅が広がる
住宅をローンで住宅を購入するとき、「頭金は住宅の購入時にしか払えない。だから最初にまとめて支払っておこう」と思い込んで、無理して頭金を払おうとする人もいるようです。
ですが、繰り上げ返済を上手に活用すると、頭金以外でも、まとめてローンを返済することができます。
ここで、例を挙げて説明しましょう。
①2割の頭金を払って、35年ローンで返済する
②1割の頭金を払って、35年ローンで返済する
①と②のうち、月々の返済額が安いのはどちらでしょうか。
もちろん、①ですね。
【参考例】
住宅購入資金3,000万円/借入期間35年/金利(年)1.25%、元利均等払にて試算
*支払総額に頭金を含む。
①の場合 | ②の場合 | |
借入金額 | 2,400万円 | 2,700万円 |
頭金 | 600万円 | 300万円 |
月返済額 | 70,581円 | 79,403円 |
支払総額 | 約3,564万円 | 約3,634万円 |
頭金を多く支払った分だけ借入額が少ないので、ローン期間が同じであれば、2割の頭金を払ったほうが月々の返済は楽になります。
ですが、繰り上げ返済(返済額軽減型)を使って、5年後に頭金1割に当たる額をまとめて返済すると、以降の月々の返済額は、①の場合とほぼ同等となります。
あるいは、繰り上げ返済(期間短縮型)を使って、5年後に頭金1割に当たる額をまとめて返済すると、返済期間が53カ月短縮されることによって①よりも返済総額が安くなることがあるのです。
【参考例】②の場合に、5年後に頭金1割相当額をまとめて返済
※5年後も金利(年)1.25%にて試算
返済額軽減型 | 期間短縮型 | |
借入金額 | 2,400万円 | 2,700万円 |
頭金 | 300万円 | 300万円 |
繰り上げ返済額(5年後) | 300万円 | 300万円 |
返済期間 | 35年 | 30年7カ月 |
以後の月返済額 | 69,406円 | 79,299円 |
支払総額 | 約3,575万円 | 約3,510万円 |
もちろん、住宅の物件価格や利子、ローンの返済期間などの諸条件によって、どのプランがどのくらいお得になるかは異なりますし、金融機関によってはは繰り上げ返済時に手数料がかかる場合もあります。
ですが、「頭金は多ければ多いほど良い」といった思い込みは、払拭できたのではないでしょうか?
住宅ローンを組むときは、繰り上げ返済を活用することも選択肢の1つに入れてみることをおすすめします。
■住宅購入を決める前にセカンドオピニオンを
かつては常識だった「頭金は2割」という考え方も、時代が変われば最善とはいえなくなります。ましてや、それが、あなたにとって最善の住宅ローンの組み方であるとは限りません。
ですから、住宅を購入する際には、固定観念や常識にとらわれず、広い視野を持って計画しましょう。そして、ファイナンシャル・プランナーに相談するなど、セカンドオピニオンを活用することをおすすめします。
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