健康
民間の介護保険に加入する前に!公的な介護保険サービスを確認しておこう

認知症による経済的負担を和らげるために、民間の介護保険に加入を検討している方も多いのではないでしょうか。しかしその前に、公的な介護保険制度についてしっかりと知り、介護保険サービスについて確認しておくことが重要です。
■公的な介護保険制度とは?
介護の負担を社会全体で支えようと2000年にスタートしたのが、介護保険制度です。全国の各市町村が運営主体となっており、40歳になると国民全員が加入して介護保険料を納めることになります。40~64歳の人は健康保険料と一緒に支払い、65歳以上の人は年金から天引きされる形で支払っています。
介護保険制度による介護サービスを受けられるのは原則的に65歳以上の「第1号被保険者」となっています。第1号被保険者は要介護状態になった原因を問わず、介護保険サービスを受けることができます。40~64歳の「第2号被保険者」は、認知症や脳血管疾患など、加齢が原因の特定の病気によって要介護状態になった場合にのみ、介護保険サービスを受けることができます。
介護保険制度による介護保険サービスを受けるには、まず要介護認定を受ける必要があります。各市町村に設けられた窓口に申請すると、調査員が本人や家族から行った聞き取り調査や、主治医の意見書などを基に要介護度を決定します。要介護度は「要支援1~2」、「要介護1~5」の7段階に分かれており、段階によって利用できるサービスや利用限度額に大きな違いがあります。
■受けられる介護保険サービスは?
介護保険制度で受けられる介護保険サービスは「要支援」と「要介護」で違いがあります。
社会的支援を必要とするが要介護状態ではない、あるいは部分的に要介護状態であるが改善が見込まれる「要支援」の人が受けられるサービスは、それ以上状態を悪くしないための「介護予防サービス」が中心となります。
生活において何らかの介護が必要となる「要介護」の人が受けられるサービスは、自宅で過ごす人向けの「在宅サービス」と高齢者施設で過ごす人向けの「施設サービス」に分かれます。施設サービスは特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護施設に入所することによって受けるサービスです。一方在宅サービスには、ホームヘルパーが自宅を訪れてさまざまな介護を行ってくれる訪問介護や、デイサービス、ショートステイなどさまざまな種類があります。できる限り自宅で自立した生活を行うために、車いすや介護ベッドなどの貸与、自宅をバリアフリー化するための改修費などの支給といったサービスを利用することもできます。
これらのサービスは、1割または2割の自己負担で利用することができます。ただし、この支給額には1ヶ月あたりの限度額が設定されており、限度額を超えた分については全額自己負担となります。要介護度によって1ヶ月あたりの支給限度額は異なっており、要支援1の人と要介護5の人では支給限度額は30万円以上の違いがあります。
■負担軽減制度も利用可能
公的サービスには、「高額介護サービス費制度」、「高額医療・高額介護合算療養費制度」など自己負担軽減のための仕組みや、要介護者の家族のための「介護休業給付金」なども用意されています。
高額介護サービス費制度は、1カ月に支払った利用者の負担の合計が負担の上限を超えたときは、超えた分が払い戻される制度で、負担の上限は世帯所得によって異なります。高額医療・高額介護合算療養費制度は医療費と介護費が同時に多くかかった場合に、年齢や収入によって定められた限度額の超過分が払い戻される制度です。また介護休業給付金は、家族の介護で仕事を一時休業せざるを得なかった人の収入を補う制度となっています。
こうした公的な介護保険サービスや負担軽減制度は、「サービスを利用するのに抵抗感がある」、「制度が複雑で利用しにくい」といった理由から、フル活用されていないケースが多くなっています。民間の介護保険に加入する前に、公的な介護保険サービスや制度の内容をしっかり把握し、いざというときの備えをどの程度しておけばいいのかをじっくり考えてみましょう。
お金に関する不安・お悩みを解決! ファイナンシャル・プランナーへの相談はこちら