健康
今注目の認知症リスクに備える保険とは?

超高齢化社会に突入した日本。自身はもちろんのこと、両親や配偶者といった身近な人が認知症になるリスクも他人事とは言えません。身近な人が認知症になってしまったときのリスクや負担に備えられる保険には、どのようなものがあるのでしょうか。
認知症によって発生する負担を保険でカバーする方法について、詳しくご紹介します。
■他人やものに与えた損害をカバーする個人賠償責任保険
認知症の人は、周りの人が目を離した隙に、誰かにケガをさせてしまったり、店舗の商品を壊してしまったりすることがあります。また、家族の目を盗んで徘徊し、道路や線路に入り込んだことによる事故も実際に起こっています。
そのようなとき、認知症患者本人は「責任無能力者」と判断され、損害賠償責任を免れる場合があります。ですがその場合、その人を監督する義務のある人(家族など)が、損害賠償責任を問われる可能性があるのです。
このように、認知症患者が他人やものに損害を与えたときのリスクに備えるには、「個人賠償責任保険」に加入するという方法があります。
【個人賠償責任保険とは】
・悪意なく他人を死傷させたり他人のものを壊してしまったりして、法律上の損害賠償責任を負ったとき、保険金が支払われる。
・単独加入ではなく、自動車保険や火災保険、傷害保険の特約として付けるのが一般的。
・保険料は年間1,000~2,000円程度で、最大1億円程度まで補償されることが多く、リーズナブル。
・「生計を共にする同居の親族」が損害賠償を請求されたときも補償対象となる。
このように、家族内で1人でも個人賠償責任保険に加入しておけば、認知症患者が他人やものに損害を与え、損害賠償を請求されたときに備えることができます。ただし、次の点に注意しましょう。
◇補償対象となるのは、「ケガ」や「破損」などの直接被害があったときのみ
個人賠償責任保険で保険金がおりるのは、「人が亡くなった」「人がケガをした」「ものが壊れた」など、人やものに直接損害があった場合のみです。
そのため、「認知症の人が線路に入りこんだために電車が遅延した」など、鉄道会社の業務が妨害されたことに対する損害賠償については、補償されません。
◇保険会社に確認すると安心
従来の個人賠償責任保険のパンフレットや説明を見ても、補償例のなかに認知症のケースが書かれている商品は少ないといえます。ですから、自分や家族が認知症によって損害賠償責任を負った場合も補償の対象となるかどうかを、事前に確認しておくことをおすすめします。
■より認知症リスクに対応しやすく。変わりつつある個人賠償責任保険
2015年10月、三井住友海上火災保険は、個人賠償責任保険に当たる「日常生活賠償特約(保険金額・無制限)」の内容を改定しました。
被保険者(補償を受けられる人)の範囲を拡大し、従来の
・記名被保険者
・記名被保険者の配偶者
・「記名被保険者とその配偶者」の同居の親族
・「記名被保険者とその配偶者」の別居の未婚のお子さま
に加えて、新たに「上記のいずれかの方が無責任能力者である場合は、その方の親権者、および監督義務者等」という一文が加わったのです。
これにより、被保険者やその配偶者が認知症で、「無責任能力者」と判断された場合は、その監督義務者が補償を受けられるようになりました。
たとえば、「実家の親が認知症になり、定期的に通って介護をしている」といったケースで、認知症の親が他人やものに損害を与えた場合、介護をしていた子が保険金を受け取ることができるのです。
三井住友海上火災保険以外にも、個人賠償責任保険を改定し、補償対象を拡大する保険会社が増えつつあります。
高齢化が進む日本では、認知症になった実家の親や、別居している親族を介護するという状況は増えてくると予想できます。保険会社は、補償の対象を「同居の親族」から拡大することで、より幅広いニーズへの対応を図っているのです。
■公的介護保険をカバー。民間介護保険
家族が認知症になると、医療費や介護費用が必要となり、家計の負担が増えます。
介護認定を受ければ介護保険が適用されますが、認知症は付き添いやヘルパーが必要となるシーンも多く、働きにくくなって収入が減ったり、介護サービスの費用がかさんだりすることもあります。
そのため、公的介護保険だけでは、カバーしきれない可能性があるのです。
認知症による介護費負担のリスクに備えるには、民間の介護保険を利用する方法があります。
一般的な民間の介護保険は、公的介護保険の要介護認定を受けると、連動して一時金や年金が支払われる「連動型」や、保険会社独自の支払い基準がある「独自型」など、仕組みは商品によりさまざまです。
そのほか、認知症リスクに備えるには、次のような保険商品もあります。
◇認知症治療に特化した保険
・認知症と診断され、継続的に症状があれば、給付金が支払われる
・認知症の発症リスクが高い人でも加入しやすい
◇ADL障害(「日常生活動作」(人が独立して生活するために必要な基本動作)を意味するADLに障害が生じて他人の介助が必要になった状態)を保障する保険
・認知症や要介護状態を保障する
・公的介護保険の要介護度認定とは違う、ADL障害指数表によって、障害度や年金額が決まる
認知症は、一般の病気やケガとは異なり、さまざまなリスクをはらんでいます。
両親や配偶者といった身近な人が認知症になったときのリスクや負担を考え、幅広い保険商品を比較検討し、過不足なく備えることが大切です。
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