経済

マイナス金利って何?日銀の狙いと日本経済に起こりうる副作用

マイナス金利って何?日銀の狙いと日本経済に起こりうる副作用

2016年2月16日、日本銀行がマイナス金利を導入しました。これは新しい金融緩和政策と位置づけられていますが、マイナス金利によって、日本経済はどのような影響を受けるのでしょうか。また、家計にはどのような影響が考えられるのでしょうか。
以下では、マイナス金利の詳細や、マイナス金利によって生じる影響についてご紹介します。

■預けると損して借りると得する



金利が0.1%の場合、1,000万円預けると1年で1万円の利子が付き、預金額が1,001万円に増えます。これが、一般的な「プラス金利」の状態です。
一方、金利が-0.1%の場合、1,000万円預けると同じ1年後には1万円の手数料を取られ、預金額が999万円に減ってしまいます。これが、日本銀行が行った「マイナス金利」の状態です。

今回のマイナス金利は、民間の銀行が余剰資金などを新たに日銀の当座預金口座へ預けるとき、その一部に0.1%の手数料を課すというもの。ですから、一般の人が市中銀行に預けている貯金にマイナス金利が適用されて、貯金が減ってしまうことはありません。
とはいえ、「預けると損をして、借りると得をする」という前代未聞の金融政策を、日銀はなぜ導入したのでしょうか。

■マイナス金利を導入した狙いと影響

「日銀に預金すると損する状態を作り出すことによって、市中銀行のお金が企業や個人への貸し出しに回るよう促し、景気上昇やデフレ脱却につなげる」

これが、マイナス金利の基礎となる考え方です。つまり、預貯金として眠っているお金を動かし、日本経済を元気にしようというのが、日銀や政府の狙い。マイナス金利の導入によって、日本経済は次のように動いていくと期待されていました。

・日銀の預金が減って市中のお金が増える結果、市中金利が全体的に低下する。

・銀行の貸出金利や社債の利回りが低下し、「お金を借りやすい状態」「使った方が得な状態」となる。

・企業の資金調達や個人消費が活発化し、景気が上向きになる。

そして、日本経済が実際に受けた影響は次の通りです。

【実際の動き】
・1月29日、日銀がマイナス金利の導入を発表。

・2月9日、国債の長期金利が過去最低のマイナス0.035%を記録。
マイナス金利の導入が決まった影響で、市中銀行が「日銀に預けているよりは」と、まずはリスクの低い国債を買おうと動いたためです。

・2月16日、マイナス金利導入。

・2月17日、金融機関同士が短期的に資金を貸し借りするコール市場で、約10年ぶりにマイナス金利の取引が成立

そのほか、生命保険会社が利回りの高い終身保険や年金保険の販売を一部停止したり、予定利率を引き下げたりする動きが起こりました。そのほか、自動車ローンや住宅ローンの金利も、相次いで引き下げられています。

このように、マイナス金利の導入によって、市中金利は全体的に低下していきました。では、日銀の狙い通り、日本経済は元気になっていくのでしょうか。

ところが、そこにはある副作用が待ち受けていたのです。

■市中銀行の収益が悪化す

マイナス金利の影響によって市中金利が下がると、銀行の企業向け融資や住宅ローンの利率も下がり、銀行の収益が減ることになります。また、利回りが下がるとせっかく預金が集まっても、うまく運用できなくなります。そのため、銀行が一般の預金金利を引き下げる動きが起こることになります。

2月22日、三菱東京UFJ銀行が、普通預金の金利を従来の0.02%から0.001%に引き下げました。同じく、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行と、2月の間に大手銀行が次々と普通預金金利を0.001%に引き下げています。

2月23日には、ゆうちょ銀行の通常貯金の金利も、それまでの0.02%から0.001%に引き下げられました。さらには、それまで金利が0.025%だった定額貯金と、0.25%または0.3%だった定期貯金の金利も、それぞれ0.01%に引き下げられたのです。

■預金金利が下がって貯蓄計画が崩れる……!?



日本銀行は当初、「マイナス金利を導入したからといって、一般の人の預金金利までマイナスになることはない」と発表していました。ですが実際は、マイナスにこそならないものの、民間の銀行が預金金利を引き下げる動きが起こっています。

こうなると、家計への影響も小さくありません。預貯金の金利が下がると、せっかく立てた貯蓄計画が崩れてしまいます。マネープランに敏感な人は、「このまま銀行に預金していていいのだろうか」と、銀行の窓口に相談に行ったり、別の資産運用先を考えたりと、模索を始めています。

マイナス金利という前代未聞の金融緩和政策により、個人のマネープランや家計も、見直しを迫られているのです。預金だけでは資産を増やすことはほぼ不可能です。子供の教育資金や老後資金などの必要な資産をどう形成していけばよいのか。この機会に、ファイナンシャル・プランナーなどのお金のプロに相談して、貯蓄や投資信託など、資産運用に関するアドバイスを受けて見られてはいかがでしょうか。

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