経済
【2020年フリーランス減税】基礎控除と青色申告改正で減税になる場合・ならない場合

2020年1月1日に所得税の基礎控除額が改正され、2020年は“フリーランス減税年”になるといわれています。
しかしこの“フリーランス減税”、すべてのフリーランスが減税になるわけではありません。実はフリーランスや個人事業主でも、減税にならない場合があるのです。
そこで当記事では、2020年度にフリーランスで減税になる場合とならない場合の事例を、わかりやすく解説します。減税の要である基礎控除額と青色申告特別控除額の改正内容もご説明していきます。フリーランスで「税金がいつから安くなるのか気になっている」方は、参考になさってください。
■2020年フリーランス減税の内容
2020年は“フリーランス減税”年といわれていて、フリーランスや個人事業主*で実質減税になる方は多くいます。
フリーランス減税のおもな内容は、以下の2つです。
<フリーランス減税の内容>
- ①2018年度の税制改正により、2020年1月1日より以下2つの控除額が改正された(2021年2月の確定申告から適用される)
- ・基礎控除額の改正(改正前38万円→改正後48万円)
- ・青色申告特別控除額の改正(改正前65万円→改正後55万円)
②青色申告特別控除額については、電子申告など所定の申告方法にすれば、引き続き65万円の控除を受けられる
*ここでの「フリーランス」とは、個人事業主として事業所得を得ている方を指しています
基礎控除額の改正
「基礎控除」とは、フリーランスや個人事業主を含めてすべての納税者に適用される所得控除です。
2019年までの基礎控除額は一律で38万円でしたが、2020年以降の控除額は10万円増え、48万円になります。
控除額が増えると所得税は減税になるため、基礎控除額の改正は“フリーランス減税”の目玉といえるでしょう。
ただしこの基礎控除額、2020年度から所得制限が付きました。
合計所得金額が2,400万円を超えると段階的に基礎控除額は少なくなり、2,500万円を超えると基礎控除額じたいゼロになります。
つまりフリーランスでも高所得者の場合は、減税対象になりません。
覚えておきましょう。
青色申告特別控除額の改正
「青色申告特別控除」とは、確定申告の際に複式簿記など所定の方法で申告した方が受けられる控除です。
青色申告特別控除額の改正内容は、以下の2つ。
- 青色申告特別控除額は、65万円→55万円に減額
- ただしe-Tax による電子申告または電子帳簿保存にすれば、引き続き65万円の控除を受けられる
しかし所定の方法以外で申告した場合、控除額は減額されて55万円になるのです。
控除額は増えれば減税、減れば実質増税になります。つまり電子申告か電子帳簿保存をしなければ、基礎控除額の増額による減税効果は無くなってしまうのです。
青色申告対象者は、2020年度からは申告方法に気をつけなければ減税対象にならないので、覚えておきましょう。
■2020年にフリーランスで減税になる場合・ならない場合
先述のとおり、2020年度(2021年2月~の確定申告)からフリーランスで減税になるかどうかは、確定申告の方法によって異なります。
以下に減税対象の事例をまとめましたので、改めてご確認ください。
<フリーランスで減税になる場合・ならない場合>
- ①青色申告対象者で、電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存方式で申告する場合
→基礎控除額の増額により、減税になる - ②青色申告対象者で、確定申告書を手書き・あるいはパソコンで印刷して申告する場合
→基礎控除額は増額になるが青色申告特別控除額は減額されるため、減税にならない - ③白色申告対象者
→基礎控除額の増額により、減税になる - ④合計所得金額が2,400万円超の場合
→基礎控除額の減額により、減税にならない(増税になる)
つまりフリーランスで気をつけなければならないのは、②の青色申告対象者で電子申告と電子帳簿保存以外の方法で申告している方と、④の2,400万円超の高所得者です。
とくに②の方は申告方法さえ変えれば減税対象になるので、確定申告のときは気をつけておきましょう。
■電子申告(e-Tax)か電子帳簿保存、どちらがよいか
電子申告(e-Tax)か電子帳簿保存、どちらがよいか
青色申告特別控除額で引き続き65万円の控除を受けるには、「e-Tax による電子申告または電子帳簿保存」が必要です。
申告方法を変える場合、電子申告(e-Tax)と電子帳簿保存、どちらがいいのか悩みますよね。
結論から言えば、個人の申告は電子申告 (e-Tax)のほうが簡単で便利です。
くわしく解説していきましょう。
個人の利用は電子申告(e-Tax)がオススメ
電子申告(e-Tax)か電子帳簿保存、いずれかの方法で迷っている方には電子申告(e-Tax)をオススメします。
もちろんどちらの方法も利用するには一定の準備が必要なので、ある程度手間はかかります。ただ電子帳簿保存は、電子申告(e-Tax)よりも手間と費用がかかりやすいのです。
<電子申告(e-Tax)と電子帳簿保存 利用に必要な物や手続き>
電子申告(e-Tax) | 電子帳簿保存 |
---|---|
<ID・パスワード方式※1>
|
|
<マイナンバーカード方式>
|
- ※1 ID・パスワード方式は、マイナンバーが普及するまでの暫定的な対応となる
- ※2 原則、課税期間の途中に適用されない。しかし2020年度に限っては、9月30日までに承認申請書を出して一定の要件を満たせば、65万円の控除を受けられる
出典:「ID・パスワード方式について」(国税庁ホームページ)
「マイナンバーカード方式について」(国税庁ホームページ)
電子申告(e-Tax)でID・パスワード方式の場合、事前に税務署で届出さえしておけば、他に用意するものや手続きは不要です。
またマイナンバー方式の場合は、用意したマイナンバーカードでお得なポイントをもらえるキャンペーンが、2020年9月から実施されています。
上限5,000円分のお得なポイントをもらえるので、オススメですよ。
【2020年3月最新】「マイナポイント」はいつからいつまで?利用期間や使い方を解説
一方、電子帳簿保存は事前に用意する物や手続きが多いのが難点です。
所定の会計ソフトを購入するだけではなく、電子帳簿保存に関する規定の準備や事前申請も必要になります。
もともと「確定申告は税理士任せ」という方であれば、電子帳簿保存でも問題ないかもしれません。
しかし「確定申告は税理士に任せず自分で書類を作成・申告している」というフリーランスの場合は、手間がかかりにくい電子申告(e-Tax)をオススメします。
■まとめ
「フリーランスの税制改正(基礎控除額&青色申告特別控除額改正)について」まとめ
フリーランスで青色申告の対象者は、2020年度(2021年2月~)の確定申告方法に気をつけましょう。
とくに、今まで手書きやパソコンで確定申告書を作成していた場合は要注意です。
2020年度からは電子申告(e-Tax)か電子帳簿保存方式で申告しなければ、せっかくの”フリーランス減税”を享受できません。
個人で確定申告書の作成をしているフリーランスにオススメの方法は、電子申告(e-Tax)です。
電子申告(e-Tax)なら、電子帳簿保存方式よりも手軽に低コストで始められます。
この機会にマイナンバーカードを用意して電子申告(e-Tax)の準備をしておき、減税のチャンスを逃さないようにしましょう。
※この記事は2020年8月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。