住まい
地震保険料値上げって本当!? あらためて考えたい、地震保険の賢い選び方

将来的な災害リスクの高まりもあってか、損害保険料率算出機構は2015年9月、金融庁長官に対して地震保険基準料率を全国平均で5.1%引き上げる届出を行いました。これによって地震保険料は改定され、2017年1月以降は地震保険料の全国平均が値上がりする見込みとなっています。
地震保険はまだまだ加入率が低く、その保障内容や今回の届出の影響などが詳しく知られていない状況といえます。そこで今回は、届出の内容やそもそもの必要性など、地震保険について考えてみましょう。
■改定によって具体的にどう変わるのか
前述したように、2015年9月の届出によって地震保険基準料率が、全国平均で5.1%引き上げられる予定です。改定率は各都道府県や建物構造区分によって異なり、最大引き上げ率が14.7%、最大引き下げ率が15.3%となっています。最も引き上げられる地域は、耐火構造の場合で埼玉県、非耐火構造の場合で福島県です。最も引き下げられる地域は、耐火構造・非耐火構造ともに愛知県・三重県・和歌山県です。
2017年1月からは、地震保険基準料率の引き上げと同時に損害区分の細分化も行われます
地震保険では建物の損害具合によって支払われる保険金額が変わり、これまでは5%支払いの一部損、50%支払いの半損、100%支払いの全損という3つの区分がありました。これが2017年1月以降、一部損、小半損、大半損、全損という4つの区分に変わることになります。つまり、これまで半損だと判定されていたものが、その程度によって2つに分けられるようになるのです。小半損では30%支払い、大半損では60%支払いとなっており、これによって地震保険の平均受取額は減少するとされています。
なお、今回の申請は3段階に分けた料率改定の1回目の改定の届出となり、損害保険料率算出機構は最終的に全国平均19%引き上げる方針を示しています。
■そもそも地震保険ってどんなもの?必要性はどのくらい?
地震大国といわれる日本では、2004年の新潟県中越大震災や2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震など、近年大規模な地震による被害がいくつも発生しています。将来的にも大きな地震が発生する可能性が示唆されているなかで、地震に対する備えが重要視されてきているのが現状です。だからこそ地震保険への注目は高まっており、2015年度末に日本損害保険協会が行った調査によると、地震保険の世帯加入率は全国平均29.5%で、1995年の阪神淡路大震災以降、加入者は増え続けているものの、生命保険や自動車保険の加入率と比べると決して高い加入率とはいえません。また地震保険は単独で加入することができず、火災保険に付帯して契約する形式となっているため、まず自身の住宅の火災保険に加入していることが前提となります。
保険金額は火災保険の30~50%の間で任意に設定できますが、建物5,000万円、家財1,000万円が限度です。支払う保険料は地域や建物構造によって変わり、建築年や耐震診断などによって割引が行われます。
それは、“地震”という災害の特殊性もあり加入すべきかどうかの判断が難しいからではないでしょうか。生命保険や医療保険、また自動車保険など、身近に潜むリスクを対象にした保険と比べると、地震のような天災のリスクは発生するかどうか、被害に遭うかどうかが予想しづらいものです。それでいて大きな震災レベルになると大規模な損害を被ります。そのため、地震保険そのものが必要であるかどうかよりも、現在の自分たちの状況から必要性について考えることが大切といえます。
たとえば住宅ローンの支払いがまだまだ残っているという場合。このケースで仮に地震で損害を受けた場合、新しい住まいの家賃とローンで家計が圧迫されることになります。このようなケースでは、地震保険に加入するメリットは大いにあります。同じように、貯蓄が少ない場合も地震保険に加入するメリットは大きいといえます。逆にいえば、住宅ローンを完済していたり貯蓄が十分であったり、仮に地震で住宅に損害を被っても経済的になんとか立て直していける見込みがある場合や、過去の発生頻度から地震が比較的少ない地域に住んでいる場合などは地震保険の優先度は低くなるでしょう。実際に、地域によって地震保険加入率は異なり、直近で深刻な被害を受けた宮城県は地震保険の世帯加入率が50%を超えています。
これから先、地震がいつ・どこで起こるかは誰にもわかりません。自分たちの住んでいる場所や状況、家計を圧迫しない程度に継続していける保険料かなど総合的に見て必要性を考えましょう。
■加入するならいつがおすすめ?
自身の状況を把握し、地震保険が必要だと判断した場合、いつ加入するかも重要なポイントです。前述したように地震保険料は値上がりが確定しているため、現在加入している火災保険に今すぐ付帯しなければ、と考える人も少なくありません。しかし、ここで注意したいのは、すべての地域で値上げが行われるわけではないというところです。
2017年に5.1%、2021年までに19.0%の値上げが見込まれている地震保険料ですが、これはあくまでも全国平均です。値上げされる地域のほうが多いことは確かですが、なかには現在より値下げされる地域もあるのです。都道府県によって保険料率は異なるため、自分の住んでいる地域の保険料率と、値上げについて確認したうえで検討することをおすすめします。
※この記事は2016年10月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制・保険商品の内容等が変更される可能性があります。
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