健康

抗菌薬が効かない!?「薬剤耐性」って何?

抗菌薬が効かない!?「薬剤耐性」って何?

風邪をひいたときなど体調が悪いときに、症状が似ているからと以前に病院で処方された薬を服用したことがある人は少なくないのではないでしょうか。特に抗生物質、抗菌薬は処方されることが多く、身体がだるく意識も朦朧としている中で、すぐにでも楽になりたいという考えで「以前もらった薬をとりあえず飲んでおけば楽になれるかも」と考えることがあるかもしれません。

しかし、こうした抗菌薬の不適切な使用によって、病気が治りにくくなっている事実はあまり知られていません。実は現在、こうした抗菌薬が効きにくい、薬剤耐性を持っている菌が増えているのです。
「薬剤耐性」とはどういったもので、なぜ耐性菌が増えるのでしょうか。また、耐性菌を増やさないために、国や個人ではどういった取り組みができるのでしょうか。ここでは、世界的に問題となっている薬剤耐性について考えます。


■薬剤耐性はどのようにして生まれるのか



薬剤耐性はAMR(Antimicrobial resistance)ともいわれるもので、抗菌薬に対する耐性を指します。薬剤耐性(AMR)を得た菌は抗菌薬が効きづらく、それゆえそうした菌によって生じた症状は簡単には治らなくなります。
薬剤耐性(AMR)が生まれる原因は、抗菌薬の不適切な使用です。抗菌薬は便利であるため頻繁に服用しがちですが、必要性の低い抗菌薬を過度に服用すると体内の菌が抗菌薬に慣れてしまい、耐性を作ってしまいます。そのため、「とりあえず抗菌薬」という服用の仕方をしていると、薬剤耐性(AMR)を持つ菌はどんどん増えてしまいます。また、抗菌薬の服用を自分の判断でやめてしまうケースも原因のひとつです。抗菌薬が処方される場合、処方された分は飲みきるという指示が出されます。これを守らずに途中で服用をやめてしまうと菌を抑えきることができず、残った菌が薬剤耐性(AMR)を得る可能性があるのです。
複数の薬剤に対して耐性を持つ多剤耐性菌も存在しており、抗菌薬が効かないことから治療期間が長引いたり重症化したりといった問題が世界中で発生しています。

■薬物耐性は世界的な問題となっている

現代は昔に比べて国と国との間での人や物の行き来が簡単になっていて、その頻度も高くなっています。そのため、どこかの国で薬剤耐性(AMR)を持った菌による感染症が流行した場合、世界中に拡散する可能性があります。そのため、薬剤耐性(AMR)に関する取り組みは各国と連携して行われています。
薬剤耐性(AMR)の問題に対してWHO(世界保健機関)は、2015年4月に各国に向けて「薬剤耐性(AMR)によって効果的な治療や予防が難しくなっている」「世界規模の公衆衛生に対する脅威であることから全政府機関や社会が行動を起こす必要がある」といった注意喚起を行っています。

■日本での取り組みと個人で注意すべきこと



世界的に薬剤耐性(AMR)に対する取り組みが行われているなか、日本でも「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が2016年4月に取りまとめられました。このプランでは、普及啓発・教育、動向調査・監視、感染予防・管理、抗微生物剤の適正使用、研究開発・創薬、国際協力の6つの分野において、おのおの取り組みを行っています。こうした対策プランは世界中でまとめられていますが、日本の大きな特徴としては数値目標が設定されているところにあります。例えば抗菌薬の使用量は、2020年までに全体で33%削減するという目標があります。抗菌薬の使用量だけでなく、薬剤耐性率についても薬剤ごとの目標が定められています。

薬剤耐性(AMR)問題に対する個人の取り組みとしては、

・「抗菌薬を正しく服用すること」

・「そもそも抗菌薬を必要とする機会を少なくすること」

などがあげられます。
症状が軽くなってくると、自分の判断で薬を飲むのをやめてしまったり、数を減らしてしまったりすることがあります。しかし、本来の用法から外れた飲み方をしてしまうと、十分な効果が期待できないのはもちろん、薬剤耐性(AMR)の拡大につながってしまいます。同じく、以前処方された抗菌薬を自己判断で飲むのも厳禁です。その時々の症状や原因に合わせて抗菌薬は処方されるため、中途半端に抗菌薬を使ってしまうことも薬剤耐性(AMR)を拡散させる要因となります。
また、根本的な対策として感染症にかからないことも大切です。しっかりと予防して健康な状態を保っていれば、抗菌薬を使う機会も少なくなり、それだけ薬剤耐性(AMR)が生まれる可能性を減らすことができます。

薬剤耐性(AMR)は一昔前に比べて耳にすることが増えてきましたが、まだまだ認知度は低いといえます。そのため、抗菌薬と薬剤耐性(AMR)について正しい知識をつけ、各自が注意していくことが大切となります。

※この記事は2016年12月時点の法律・情報にもとづき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。

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