教育・子育て
産後パパ育休ってどんな制度?制度の内容や取得するメリット・デメリットを解説
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- 共働きで頼れる親族などが近くにいないので、二人とも育休をとって子育てに専念したい。
- 上の子の保育園があり里帰り出産が難しいので、夫婦で育休をとりたい。
- 寝返りや歩くようになるなど、急激に成長する0歳から1歳の時期に積極的に子育てをしたい。
など、ライフスタイルや育児に対する考え方などの様々な状況の中で、男性の育休取得率は年々増えており、2022年度の取得率は17.13%となっています。
2022年に育児・介護休業法が改正され、育児休業の分割取得や産後パパ休業制度のほか、企業には育児休業を取りやすい雇用環境の整備が義務化されました。
また、会社の制度として配偶者が出産したときの特別休暇や、子供が小学校に上がるまでなど所定の期間は育児のために休暇を取得できる「育児休暇」などを設けている企業もあります。
男性の育休取得を促進し、性別に関係なく仕事と育児等を両立できる環境づくりが社会全体で進められています。
このコラムでは、育児・介護休業法に基づき男性が取得できる育児休業制度にはどんなものがあるのか、育休を取得した場合に受けられる経済的支援、男性が育休を取得するメリット・デメリットなどについて紹介します。
男性が取得できる育休とは
男性が取得できる育児休業には、産後パパ育休(出生時育児休業)と育児休業があります。
表 産休・育休の概要
| 産前産後休業 | 産後パパ育休 | 育児休業 |
---|---|---|---|
対象者 | 女性 | 男性 | 男性・女性 |
取得可能期間 | 出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間)から出産後8週間まで | 子の出生後8週間以内に4週間まで | 原則、子が1歳(最長2歳)まで |
分割取得 | 不可 | 可(2回まで) | 可(2回まで) |
産後パパ育休(出生時育児休業)
産後パパ育休(出生時一時休業) とは、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できる休業です。
1歳までの育児休業とは別に取得できます。
育児休業は休業の1か月前までに申請する必要がありますが、産後パパ育休の場合は原則休業の2週間前までに申請すれば利用できます。
産後パパ育休は男性版産休と言われることもありますが、女性の産前産後休業と違い産前の取得はできません。
産後に取得できるなら育児休業と変わらないのでは?と思われるかもしれませんが、通常の育児休業と組み合わせることで、合計4回の分割取得ができます。
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また、育児休業とは異なり労使協定を締結した場合は、労働者が合意した範囲で休業中の就業も可能となっており、夫婦の育児や働き方にあわせて休業を取得できます。
育児休業
育児休業は男女ともに利用できる制度で、取得できる期間は原則子供が1歳になるまで、保育所への入所が難しいなどの理由があれば最長2歳までとなっています。
自営業や専業主婦(主夫)は育児休業の制度はありませんが、夫婦のどちらかが企業などに雇用されていて要件を満たしていれば育児休業を取得できます。
また、夫婦ともに育児休業を取得する場合、原則子が1歳2か月に達するまでに休業可能期間が延長されるパパ・ママ育休プラスという制度もあります (2か月分はパパ[ママ]のプラス分) 。
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産後パパ育休・育児休業中に受けられる給付金などの経済的支援
産後パパ育休・育児休業中は就業しないため給与はなくなりますが、出産育児一時金や出産手当金などの経済的支援が受けられます。
様々な支援がありますが、このコラムでは雇用保険で受けられる育児休業給付と社会保険料の免除について詳しく説明します。
育児休業給付
産後パパ育休や育児休業を取得した場合、所定の条件を満たせば雇用保険から育児休業給付として出生時育児休業給付金または育児休業給付金を受け取れます。
給付金を受け取れる主な要件は以下の通りです。
- 雇用保険の被保険者であること。
- 育児休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること。
- 育児休業期間中の1か月ごとに、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
- 就業している日数が1か月ごとに10日以下であること。
出生時育児休業給付金および育児休業給付金の支給額は以下のように計算され、支給額には上限額と下限額が設けられています。
ここでいう賃金とは、残業手当や通勤手当、住宅手当などを含む給与額面のことで、手取り金額ではありません。
なお、産後パパ育休期間中に就労し賃金が支払われた場合は、賃金額に応じて支給額が調整されます。
また、産後パパ休暇を取得し出生時育児休業給付金が支給された日数は、育児休業給付金の給付率67%の上限日数である180日に通算されます。
支給開始~180日まで:休業開始時賃金日額※1×支給日数×67%(上限額:31万143円)
181日以降:休業開始時賃金日額×支給日数×50%(上限額:23万1,450円)
取得する日数によって受け取れる給付金額が変わるので、夫婦ともに育児休業を取得したいけどできる限り収入は減らしたくないという場合は、給付率が下がるタイミングで夫が育休を取得するというスケジュールにすると、収入減少を抑えることができます。
最大4回まで分割して取得できるので、どのタイミングで取得するのが最適なのかを夫婦で話し合って決めるといいですね。
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なお、出産時育児休業給付金および育児休業給付金は非課税なので、所得税及び復興特別所得税、住民税はかからず、給与が支払われていなければ雇用保険料の負担もなくなります。
所得に応じて所得税・住民税の配偶者控除を受けることができますが、育児休業給付金は控除対象配偶者に該当するかどうかを判定するときの合計所得金額に含まれません。
社会保険料の免除
育児休業給付があるとはいえ、育休前に比べると収入は減少しますが、産休中や育休中の一定期間は健康保険や厚生年金の保険料が免除されます。
また、出産した本人が国民健康保険の被保険者および国民年金の第1号被保険者の場合は、産前産後の所定期間は保険料が免除されます。
免除期間中は年金保険料を納付したものとして取り扱われるため、将来受け取る年金額が少なくなるという心配がありません。
- 健康保険・厚生年金の免除期間
産休中および育休などの期間中
- 国民健康保険、国民年金の免除期間
出産予定日または出産日の前月から4か月間
※双子以上の場合は出産予定日または出産日の3カ月前から6カ月間
社会保険料は月収の約14%程度を占めているため、社会保険料が免除されることで育児休業給付金が67%・50%であったとしても、休業前の手取り月収の約60~80%程度を担保できることになります。
育休を取得している人の割合
厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、令和4(2022)年度の育児休業の取得率は女性が80.2%であるのに対して、男性は17.1%となっています。
10年前は約2%の取得率だったので、これでも男性の取得率は増えているものの、女性よりも圧倒的に取得率が低いのが現状です。
育休の取得期間についても、令和3(2021)年度のデータ によると、女性は10か月以上取得した人が80.2%に対して、男性は2週間未満の取得が51.5%と最も高くなっており、3か月以上育休を取得した人は10.6%にとどまることから、長期間にわたって育休を取得することは男性にとってハードルが高いことがことがうかがえます。
厚生労働省が行ったアンケート調査によると、育児休業を取得しなかった理由には、「収入を減らしたくなかったから」、「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから、または会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかったから」、「自分にしかできない仕事や担当している仕事があったから」といった回答があげられています。
育児・介護休業法の改正により企業側に育児休業を取得しやすい雇用環境の整備や、本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た人に対して育休・産後パパ育休制度の説明を個別に行い、休暇取得の意向確認をすることが義務化されました。
育休への理解は広まっていますが、取得を希望している場合、職場の上司や同僚、夫婦間で十分に相談をすることや、同僚などへの配慮を行うなど、安心して育児休業できるように計画・準備をすることが大切です。
<育休取得に向けた準備の例>
- 育休を取得するかどうか、取得期間や休業中の役割分担などを夫婦間で話し合う
- できるだけ早い段階で、育休を取得したい旨を上司へ相談する。
- 勤務先から育児休業制度の説明を受ける、仕事のスケジュールや引継ぎをどうするかなど、情報の整理や準備を行う。
- 育児休業に入る前や復帰前や直後に挨拶回りを行う。
男性が育休を取得するメリット・デメリット
男性が育児休業を取ること、夫婦で同時に育児休業を取ることによるメリット・デメリットについてみていきましょう。
<メリット>
- 貴重な乳児期の子育てに、夫婦でゆとりをもって関われる
- 子育てに対する考え方の違い・温度差をなくしやすい
- 出産直後の育休をとって男性が家事や育児を担えば、女性は産褥期に休養を取りやすい
- 子どもの将来も含めて、子育て・教育方針について話し合う時間を持てる
- 収入はなくなるものの、育児休業給付金などの経済的支援が受けられる
出産後の1年は、子どもがめまぐるしく成長する貴重な時期です。
我が子の成長をすぐ近くで観察しながら、育児の大変さやノウハウを共有していけるため、夫婦でチームとなって子育てできる点が最大のメリットなのではないでしょうか。
<デメリット>
- 収入が下がってしまう(育児休業給付金は給料の50%または67%)
- 育休期間中の職場への配慮が必要
- 職場によっては、キャリアや人事考課で不利になる可能性はゼロではない
こうした不安のある人は、産後パパ育休で2回、育児休業で2回、合計4回まで分割できる特徴を生かして1回の育休日数を短くするなどの方法で、収入や職場へ配慮しながら休みを取ることも考えましょう。
デメリットがあるとしても、大切な乳児期に夫婦で子育てできる喜びや話し合う時間を持てるのは、代えがたいメリットです。
せっかくの育休制度ですので、各家庭でうまく活用してみてください。
まとめ
夫婦で育休を取れば、乳児期の育児の大変さをお互い共有しながら乗り切れます。
子どもの教育方針や、教育費をどうするかといった話し合いもしやすくなるでしょう。
この機会に子どもの将来とお金について、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。
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※この記事は2024年3月時点の法律・情報に基づき作成しているため、将来、法律・情報・税制等が変更される可能性があります。
出典
厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 令和4年4月1日から3段階で施行」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf
厚生労働省「育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_r02_01_04.pdf
厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r04.html
厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r03.html
厚生労働省「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 令和4年度厚生労働省委託事業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000200711_00006.html
執筆者
服部 椿
プロフィール:FP分野専門のフリーランスライター。
子育て中のママFPとして、子育て世帯に役立つ家計や投資、お金に関する情報を発信中。
保有資格:2級FP技能士