家計
100万円以上かかることも! 始める前に知っておきたい、不妊治療とお金のハナシ(1)

近年、晩婚化の影響により不妊治療を行う夫婦が増え、いまや不妊に悩むカップルは6組に1組といわれています(参照:国立社会保障人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」)。これから結婚を考えているカップルも、子作りを意識している夫婦も、不妊治療を受ける可能性は充分にありえます。
不妊治療は時間と体力、そしてお金との戦いといいますが、治療が家計や仕事に与える影響についてお話します。
■不妊治療とは
日本産科婦人科学会では、妊娠を望む健康な男女が避妊せず子作りをしているにもかかわらず1年間妊娠しない状態を「不妊」と定義しています。不妊の原因は晩婚化による初産年齢の上昇が原因の一つにあげられていますが、女性だけでなく男性が原因の場合や、原因自体がわからない場合もあるため、「不妊」の原因を一慨に晩婚化による初産年齢の上昇だけとは特定できません。そのため不妊治療は、まず妊娠を妨げている原因を探り、それを取り除きながら妊娠する可能性を高める治療へと徐々にステップアップしていくのが一般的です。
【不妊治療の代表的な治療方法と費用例】
治療法 | 内容 | 保険適用有無 | 費用 |
タイミング法 | 排卵日を予測し、子作りのタイミングを合わせる方法 | 適用 | 1回数千円 |
人工授精 | タイミング法と同様、排卵日を予測し、男性から採取した精子を直接子宮内に送り届ける方法 | 適用外 | 1回約1万円~3万円※ |
体外受精 | 女性から卵子を、男性から精子を取り出して体外で受精させ、培養した受精卵を子宮に戻す方法 | 適用外 | 1回約20万円~50万円※ |
顕微受精 | 顕微鏡で見ながら直接受精させる高度な技術が必要な体外受精の一種 | 適用外 | 1回約40万円~60万円※ |
不妊治療と一口にいっても、公的な医療保険適用で比較的安価にできるタイミング法と呼ばれる治療もあれば、治療費が高額になる特定不妊治療(生殖補助医療とも呼ばれます)である体外受精・顕微授精までさまざまな治療方法があります。国の助成制度があることも手伝って、特に特定不妊治療で誕生する赤ちゃんの出生数は年々増加しています。2013年度は年間の出生数が42,554人を数え、その年に生まれた赤ちゃん全体の約24人に1人が特定不妊治療により生まれていることになります。(参照:日本産科婦人科学会ARTデータ集)
■不妊治療にかかる費用
先に紹介したとおり、治療は安価なものから高額なものまでさまざまですが、不妊症に悩むカップルを支援するNPO団体のFineが2013年に行ったアンケートでは、約55.1%の人が100万円以上の治療費がかかったと答えており、次いで10万円~100万円以下の人が42.2%、10万円以下で済んだ人はわずか10.4%という結果が出ています。
ここまで費用が高額になる理由は、不妊治療は「いつ終わる(妊娠できる)のかが全くわからない治療だから」といえます。不妊には男女ともにさまざまな要因があるため、治療は100%妊娠を保障するものではなく、妊娠するまでいろんな要因を探りながら医師と手さぐりで治療を重ねていかなければいけません。日本産科科学会の統計でも治療1回あたりの妊娠率は全年齢平均で16.3%となっており、先のNPO団体Fineのアンケートでも最終的に治療に要した期間は「2年~5年未満」と回答した人が44.6%と最も多くなっていたことから、成功率の低さから何度も治療を繰り返し治療期間が長期化していることがうかがえます。
また、経済的な負担は治療費だけではありません。国や自治体が支援する不妊治療の助成制度を利用できる医療機関は指定医療機関に限られているため、住んでいる場所の近くに医療機関が無い場合は通院の際にかかる交通費・宿泊費が必要です。また人気のある医療機関は待ち時間も長く、通院のたびに多くの時間がかかります。
そして、不妊治療は女性の月経の周期を見ながら治療を行っていくために毎月のタイミングがとても重要で、不妊治療のスケジュールを前もって組むことができません。その時その時で次の通院日を決めていくため、治療のために急に仕事を休んだり、早退したりといったことも必要になってきます。デリケートな話なので職場に相談することもできず、結果治療に専念するために仕事を辞めてしまう女性も少なくないといわれています。共働きの世帯の場合、夫の収入だけで家計を支えることになり、片働きの世帯の場合は、妻が治療の多くの時間を費やすため家事が疎かになるといった影響が出てくることが考えられます。
治療が長期にわたること、そして多くの時間を拘束されることが、治療費という経済的負担に輪をかける形で身体的・心理的負担がかかり、結果として家計や仕事に大きな影響をあたえてしまうのです。
これから子どもをもつことを考えている夫婦は、不妊治療にはこれだけ多くの負担がかかってしまうことを知ることが大切です。子どもを産み育てることは人生のライフイベントの中でも特に重要なことの一つですが、万が一の場合はこれだけの費用が発生すること、そしてどこまで治療に費用を費やすのかという点も夫婦でしっかり話しあっておくことが重要です。
次の記事では、不妊治療の助成制度をうまく活用し家計の負担を少しでも少なくする方法をご案内します。
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