家計
【20歳から国民年金に加入】保険料を支払う?学生納付特例を利用する?メリット・デメリットを解説

「20歳になったらなんで国民年金に加入しないといけないの?」「将来年金を受け取れるかわからないから、加入する必要ないのでは?」と疑問を持っている人もいると思います。
国民年金には、65歳になったら受け取れる「老齢基礎年金」以外にも、病気やケガで障害状態になった場合に受け取れる「障害基礎年金」や、自分に万一のことがあった場合に遺された家族に支払われる「遺族基礎年金」があります。
日本国内に住んでいる人には、20歳の誕生日を迎えた時点で「国民年金」に加入し、保険料を支払う義務があります。基本的に強制加入ですので「国民年金に加入しない」「保険料を支払わない」という選択肢はありません。
ただし学生のうちは、収入がなく保険料を支払うことが難しいことが一般的です。そこで国民年金には、学生の間は保険料の納付(支払い)が猶予される学生納付特例制度があります。
そこでこのコラムでは、国民年金の被保険者となった大学生に必要な手続き、保険料の支払い方、学生納付特例制度について解説します。
国民年金の加入ですべきこと
国民年金の加入に向けて
20歳の誕生日を迎えた後2週間以内に国民年金の第1号被保険者になったことを知らせる通知「国民年金の加入通知」が届きます。
国民年金に加入したら、保険料を支払う必要があります。
加入通知が届く前に、保険料をどうやって支払っていくか方針を決めておきましょう。
- 自分で保険料を支払う
- 親に保険料を立て替えてもらう、または保険料を負担してもらう
- 学生納付特例を利用して、社会人になってから追納する
国民年金の加入通知が届いたら
「国民年金の加入通知」には以下の書類が同封されています。
- 基礎年金番号通知書
- 国民年金加入のお知らせ
- 国民年金保険料納付書
- 国民年金の加入と保険料のご案内(パンフレット)
- 保険料の免除・納付猶予制度と学生納付特例制度の申請書
- 返信用封筒
もし通知が届かない場合は、管轄の年金事務所か市区町村役場の年金課に聞いてみましょう。
先に説明した通り、国民年金は基本的に強制加入なので加入の手続き自体は不要ですが、保険料の納付については手続きをする必要があります。
令和5(2023)年度の国民年金保険料の金額は、1か月あたり1万6,520円です。
保険料を支払う場合
- 加入通知に同封されている「国民年金保険料納付書」で、納付期限までに保険料を納付する。
保険料の納付は、コンビニエンスストアや金融機関の窓口で行えます。 - 口座振替やクレジットカード払、前納など今後の保険料支払いに必要な手続きをする。
学生納付特例制度を申込む場合
国民年金の保険料は、期日までに納付することが義務付けられていますが、学生納付特例制度は、大学や専門学校、大学院など20歳以上の在学中の学生は保険料払込の猶予期間が取得できるという制度です。
夜間・定時制課程や通信課程も含まれるので、ほとんどの学生が制度を利用できます。
ただし、学生納付特例を利用するには、学生本人の所得が一定の基準以下であることが条件になっています。
学生本人の所得基準:128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
<学生納付特例制度 手続きの流れ>
- 「国民年金保険料学生納付特例申請書」「在学期間がわかる学生証のコピー」「年金手帳または基礎年金番号通知書」を記入・準備する。
※「国民年金保険料学生納付特例申請書」は、日本年金機構ホームページからもダウンロードできます。(「日本年金機構 国民年金関係届書・申請書一覧」) - 住民登録のある市区町村役場、年金事務所に持ち込む、または郵送する。
- 日本年金機構による審査が完了した後に「決定通知書」が送付される。
学生納付特例制度のメリットと注意点
厚生労働省の「令和2(2020)年国民年金被保険者実態調査」によると、学生の国民年金保険料納付状況は「学生納付特例」を選択している人が63.9%、納付者は24.5%、となっており、9%は納付も学生納付特例の申請もしていない「未納者」となっています。
<学生納付特例を利用するメリット>
- 社会人になってからなど、資金的な余裕ができてから自分で保険料を納付(追納)できる
- 学生納付特例を受けている間も老齢基礎年金の受給資格期間に含まれる
- 病気やケガで障害が残った時に障害基礎年金を受け取ることができる
<学生納付特例を利用する注意点>
- 保険料の納付(追納)を忘れると、将来の年金額が減ってしまう
- 申請は毎年必要になるため、申請漏れのないよう注意する必要がある
- 申請が却下された場合は、保険料を納付する必要がある
国民年金保険料の追納について
学生納付特例が承認された期間の保険料は、10年以内であれば、古い期間からさかのぼって順に納付できます(追納)。保険料を追納するには、追納の申込(申請)が必要です。
<例>平成25年(2023年)4月から平成26年(2014年)3月まで猶予期間を有する方が、令和5年(2023年)10月に追納申込みをした場合

10年以内に追納ができなかった場合は、老齢基礎年金が満額受給できる480か月(40年間)分の保険料納付ができないため、年金額が減ってしまいます。
その場合は、60歳以降も国民年金に加入し保険料を納めることができる「任意加入制度」を利用することで、480か月に満たない分の保険料を納付することは可能です。
<追納申請・手続きの流れ>
- 年金事務所で追納の申込みをする。
申請用紙は国民年金機構のホームページでダウンロード、または、ねんきんネットの画面上で追納申込書の作成ができる。窓口に申請書を提出するか郵送で年金事務所に提出する。 - 厚生労働大臣の承認を受けたうえで、納付書が発行される。
- 納付書を使って追納する。
追納した場合としない場合で受け取れる年金額にどれくらい差があるのか
学生納付特例制度の承認を受けた期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれますが、老齢基礎年金の額の計算の対象となる期間には含まれません。
追納をしたうえで全期間(20~60歳の40年間)保険料を納付することで、老齢基礎年金を満額受給できるようになります。
令和5年度の受給できる老齢基礎年金の満額は、79万5,000円(月額6万6,250円)となっています。
老齢基礎年金の年間受給額は以下の計算式で計算します。
年間受給額=[老齢基礎年金の満額]×国民年金保険料の納付月数÷480か月(20~60歳までの40年間)
3年間未納期間があったとして計算式に当てはめてみましょう。
79万5,000円×444か月÷480か月=73万5,375円
満額受給できる場合と比べると年間約6万円の差額が発生します。
65歳時点の平均余命(男性約19年、女性約24年*)で計算すると、男性で約113万円、女性で約143万円の差額が発生することになります。
*厚生労働省:令和4年簡易生命表より
追納するメリットと注意点
追納をするメリットはいくつかありますが、デメリットはそこまで多くないので、可能な限り追納することをおすすめします。
詳しくメリット・デメリットについてみていきましょう。
<追納するメリット>
- 社会保険料控除による所得税・住民税の軽減。
追納した国民年金保険料は全額が控除額になるので、会社員や公務員の方は年末調整、自営業の方は確定申告をすることで、税負担を軽減することができます。 - 年金受給額が増える。
<追納するデメリット>
- 追納する保険料額は当時支払うべきだった保険料額であるが、保険料の納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされる。
- 通常の年金支払いに加えて追納分の支払いが必要になるため、収入に対して費用の負担が増える。
追納をする期間にあたる20代後半から30代は貯金が十分にないことや、結婚や妊娠・出産といったライフステージの変化でお金が必要になるケースが多いので、追納をすることで家計に大きな負担がかかることが考えられる。
国民年金保険料を払わなければどうなるのか
保険料の納付を忘れていた、学生納付特例の申請を忘れていたなど、こういった場合は保険料の「未納」扱いになります。
未納状態が続くと以下のようなデメリットが発生します。
- もしものことがあり身体に障害を負ったときに「障害基礎年金」が受けられない可能性がある。
- 将来受け取る年金が減る、年金受給要件を満たさなくなる可能性がある。
- 延滞金が発生する、財産が差し押さえられる可能性がある。
必ず納付期限までに保険料を支払うこと、保険料が支払えない場合は学生納付特例を利用し、加入通知が到着したらすぐに手続きをしましょう。
国民年金だけで老後は大丈夫?
総務省統計局の調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は23.7万円、単身無職世帯は14.3万円となっています。
20歳から国民年金保険料を40年間納付して、老齢基礎年金が満額受給できるようになったとしても1人あたり月額6万6,250円、会社員や公務員であれば厚生年金の給付もあるため、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は22.4万円と言われています。
また、生命保険文化センターの調査では、「最低日常生活費」と「ゆとりのための上乗せ額」を合計した「ゆとりある老後生活費」は37.9万円となっています。
リタイヤ後は老齢年金だけは足りず、貯金を崩して生活しなければならない可能性もあるため、年金制度だけではなく自助努力による資産形成が推奨されています。
お金を貯める期間を長くとって、こつこつ積み立てていけば、無理なくなくお金を貯めることができます。
若いうちから将来に向け資産形成をしていく方法としてよく挙げられる3つの方法を紹介します。
NISA
NISA(ニーサ)とは、少額投資非課税制度のことで、毎年一定金額の範囲内で購入した投資信託などの金融商品から得られる利益に税金がかからなくなる制度です。
一般NISAとつみたてNISAがありましたが、2024年につみたて投資枠と成長投資枠に変わり、併用することもできるようになりました。
成長投資枠は、投資信託はもちろん上場株式などの幅広い商品があり、目的やニーズに応じて商品を組み合わせられます。
つみたて投資枠は、長期の積み立て分散投資を目的としており、金融庁が認める一定の投資信託から選びます。
金融機関によって異なりますが、最低購入金額は1,000円以上と少額で始められます。
また、NISAはいつでも引き出しができる(運用商品を売却する)ので、もし急にお金が必要になっても安心です。
ただし、売却するタイミングによっては損失する可能性があるなど注意が必要です。
確定拠出年金
確定拠出年金とは、加入者ごとに拠出された掛金を加入者自らが運用し、その運用結果に基づいて給付額が決定される年金制度で、定期預金や保険商品、投資信託などから運用商品を選び、掛金でどの運用商品をどれだけ購入するかの配分を決めて運用していきます。
確定拠出年金には、企業年金の一つで事業主が掛け金を拠出する「企業型年金」と、個人で加入して本人が掛け金を拠出する「個人型年金(iDeCo)」があります。
確定拠出年金には、「運用益が全額非課税になる」、「掛け金が全額所得控除」、「年金資産を受け取ったときに控除の対象になる」という3つの税制優遇措置があるのが特長です。
注意しなければならない点として、確定拠出年金は原則60歳以降でなければお金を受け取ることができません。
確定拠出年金の掛け金とは別に流動的に使える預貯金も準備しておくことをおすすめします。
外貨建保険、変額保険
外貨建保険は、保険料をアメリカドルやオーストラリアドル、ユーロなどの外貨で支払い、死亡保険金や年金、解約返戻金を外貨で受け取る生命保険です。
変額保険は、死亡・高度障害保障を備えつつ、株式や債券を中心に資産運用を行い、運用実績によって保険金や解約返戻金が変動する保険です。
終身保険などの死亡保険は、自分に万一のことがあったときのための保険ですが、外貨建保険や変額保険は、万一に備えつつ資産形成もできます。
デメリットとして、外貨建保険の場合は保険金や年金を外貨で受け取るときの為替相場によって損益が出る「為替リスク」があること、変額保険の場合は死亡保障などの費用がかかるため投資信託などの投資性商品と比べると運用コストが高くなる、解約返戻金には最低保証がなく運用実績によっては払い込んだ保険料に比べて少なくなることが挙げられます。
まとめ
20歳で加入する国民年金。大学生の国民年金をテーマに学生納付特例制度と追納の仕組みと方法、メリット・デメリットを紹介しました。
一番してはいけないことは、学生納付特例制度の利用が使えるにも関わらず未納状態にしておくことです。
学生納付特例制度は毎年手続きが必要になるため、少し面倒ではありますが、保険料が未納だと将来の年金に大きく影響するだけでなく、病気やケガで障害が残った場合に「障害基礎年金」が受け取れなくなるので、期日内に手続きをするようにしましょう。
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出典
「令和2(2020)年国民年金被保険者実態調査」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/140-15a-r02-01.pdf
「令和4(2022)年簡易生命表」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/index.html
「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」(総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2022np/index.html
「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」(公益財団法人 生命保険文化センター)