FPとの相談をより分かりやすくお伝えするために、架空の人物を設定して相談事例を紹介するコーナー。今回は30代、共働き夫婦の相談編です。
後藤 太一(36歳)、由美(33歳)は結婚3年目。
それぞれフルタイムで働き、忙しいながらも充実した生活を送っています。子供の予定はなく、老後に二人でのんびり過ごしたいという希望から、コツコツ貯金をしているようです。
家計を見直して毎月の貯金額を増やし、運用も始めてみようと調べていた二人。独学に限界を感じ、FPに相談することに決めました。
後藤夫妻の不安・相談内容
- 家計が適正かどうか診断してほしい
- 効率よくお金を貯めたい
- 老後資金がどれくらい必要なのか知りたい
FPに相談して解決したこと
家計の改善
自分たちの生活スタイルに合わせた家計の改善点がわかった
貯金、運用のやり方
緊急予備資金や老後資金など、項目ごとにあわせた貯金方法がわかり、運用にもチャレンジできるようになった
面談日当日
後藤さん、初めまして。FPの田中です。お二人のお役に立てるよう努めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。さっそくですが、お二人が抱えている不安点やお悩みについて詳しくお聞かせいただき、アドバイスをさせていただきたいと思います。
初めまして、本日はよろしくお願いします。
実はこんなことを不安に思っていて……
後藤夫妻の相談内容
- 1.ある程度貯金はできているが、支出もそれなりに高いと思っているため、家計が適正かどうか診断してほしい
- 2.貯金は運用などはしていないため、運用を知り効率よくお金を貯めたい
- 3.悠々自適な老後を過ごしたいが、どれくらいお金が必要なのか知りたい
なるほど、ありがとうございます。家計、老後資金、ライフプランについてが主な相談分野ですね。
家計を見直すときは、収入・支出・貯蓄のバランスがポイント!
二人ともフルタイムで働いているので、使うお金は多い方ですが、それなりには貯金もしているつもりです。削れる場所があれば、その分を貯金に回したいです。どうでしょうか…?
後藤夫妻の家計
手取り収入 46万円
内訳
夫 25万円妻 21万円
- 住居費17万円(37%)
- 食費9万円(20%)
- 光熱費1.2万円(3%)
- 通信費2万円(4%)
- 自動車関連費4万円(9%)
- 生活用品費0.5万円(1%)
- 医療費0.5万円(1%)
- 保険0.8万円(2%)
- 貯蓄5万円(11%)
- それぞれの小遣い5万円(11%)
- その他0.7万円(2%)
- 支出合計45.7万円
- 手取り収入46万円
- 残金3000円
順番に見ていきましょう。まずは住居費と食費ですね。
- 住居費17万円(37%)
- 食費9万円(20%)
支出割合を住居費25%、食費15%を理想と考えると、やや高めです。引っ越しをする、外食を減らすなどを検討してみましょう
- 通信費2万円(4%)
プランの見直しや、インターネット回線とセットで申し込むなどで、支出を減らせるかもしれません。
- 自動車関連費4万円(9%)
滅多に車に乗らないなど使用用途によっては、維持費が安い車に乗り換える、カーシェアリングの利用などを検討してみましょう。
- 貯蓄5万円(11%)
貯蓄は20%が理想。
支出内容の見直しと、余剰資金の運用などで改善の余地ありです。
- それぞれの小遣い5万円(11%)
お小遣いは手取り収入の10%が理想!
ただし、この家計には娯楽・交際費がないため、無理のない範囲で行いましょう。
手取り収入全体から見て、何パーセントかを確認するんですね。
理想の割合を教えていただくと、家計を客観的に見ることができて分かりやすいです。
ゆとりある老後の生活費は平均36.1万円。どうやって準備する?
実際、老後にはどれぐらいのお金がかかるんでしょうか。
老後における、ゆとりある生活費の目安は平均36.1万円です。夫 65歳以上,妻 60歳以上の高齢夫婦無職世帯の実収入は平均23.8万円。差額は12.3万円ですね。
仮に80歳まで生きたとして、必要なお金を単純計算すると2,952万円になります。
老後の生活費例
例夫65歳以上妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯の
収入と支出
およそ1年分の不足
12.3万円×12か月=147.6万円
老後全体の不足
(80歳まで生きる場合)
147.6万円×20年(80歳-60歳)=合計 2,952万円の不足
point
自分が受け取る年金の目安が知りたい場合は、1年に1回誕生月に送られる「ねんきん定期便」でチェックできます
思っていたよりもお金が必要になりそうです!
ゆとりある生活費(36.1万円)と言っても、今の支出(45.7万円)より約10万円少ない金額ですね。老後になったからといって急に生活費が減るわけでもないですし…しっかり準備しておかないと。
おっしゃるとおりです。
今かかっている支出で将来減る項目があっても、加齢にともなって病気やケガのリスクが高くなり、医療費や介護費がかかってきます。貯蓄はもちろん、リスクに備えることも検討した方がいいかもしれませんね。
貯金を上手にするコツとは
貯金額を増やして運用もしていきたいですね。どんな方法がありますか?
運用方法にはNISAやiDeCo、投資信託などがありますね。運用を始めるとかんたんにはお金が引き出せなくなることが多いです。始める前に貯金の仕分けをオススメします。
貯金の仕分け
自由に引き出しができるお金
病気やケガの治療費や家財の買い替えなど、突発的に必要になるお金に備えるのに向いている。
就労状況に応じて、3か月~1年半程度の生活費がまかなえる金額が目安。
運用するお金
かんたんにはお金を引き出すことができなくなるケースがあるものの、効率よく貯金をすることができる。
老後資金など、5年以上は貯め続けるお金を運用に回すことが多い。
ただお金を貯めることしか考えてませんでした!貯金の目的ごとにお金を分けるんですね。
私たち夫婦の場合なら、老後資金を運用で貯めながら増やすのがよさそうかな?
運用をするときは、長期投資と分散投資をすることでリスク分散をするのが普通です。
後藤さんご夫婦の場合は30代とまだ若いので、いろんな運用方法の中から、自分たちにあったものを選んでいただきやすいと思います。
貯蓄と万が一の保障のバランスとは
家計の問題点や貯金するお金の目標額、運用の仕方が分かってきました!ありがとうございます。
他に考えるべきことはありますか?
生きていると多かれ少なかれ「リスク」はつきものです。そのために自由に使える貯金を残すようにお話しました。
しかし、もし大きな病気やケガをしたときや、働けなくなったときなどは、貯金だけでは対応できない可能性があります。貯金だけですべてのリスクに備えるのは難しいので、「保険」も少し考えてみてほしいんです。
確かに…老後資金でもたくさんお金が必要になるし、貯めている間に何かあったら、貯金の継続が難しくなるかもしれないですね。
そうなんです。「貯金は三角、保険は四角」といわれるように、保険なら保険期間をとおして一定した保障が受けられます。
万が一のことがあっても、貯金を崩さずに済むかもしれません。
貯金は三角、保険は四角
貯金
保険
保険は加入直後から必要な備えをすることができる!
就労状況や家族構成、将来のライフプランによって必要な保障が変わります。
また、保険は掛け捨てタイプだけではなく貯蓄性があるタイプもあるので、ご要望があれば提案させていただきますね。もちろん提案させていただいたとしても、必ず加入しなければならないというわけではないのでご安心ください。
(本当に私たちに必要だと思えば加入すればいいな。)
そうですね、お願いします。
私たち夫婦に考えられるリスクと、リスクに備える保険を聞いてから、家計を考慮しつつ検討してみたいと思います。
その後
後藤さん夫婦はFP田中さんのアドバイスをできるところから実践し、少しずつ貯金額を増やすことに成功しました。
一度は保険の検討は見送ったものの、万が一の病気やケガ、将来の介護のことを考え、定期的にFP田中さんにアドバイスをもらっています。
※この相談事例はフィクションです。実在する人物・内容ではありません。このコラムの監修者
- 監修FP條 武尊
- 保有資格:2級FP技能士
FPナビを中心にライフプラン相談などを行っており、長く寄り添える情報提供を心がけている。一児のパパで、人当たりがやわらかく話しやすいと評判。
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